Vol.7:True Colors CARAVAN in Osakaレポート!
Vol.7:大阪のTrue Colors CARAVANは、灼熱の太陽と熱風の
表現日和でした。
こんにちは。True Colors CARAVAN広報チームの天野です。
2022年8月14日(日)に、True Colors CARAVAN(以降CARAVAN)の黄色いバスは、出発式の東京、名古屋、広島、札幌を経て、大阪「グランフロント大阪うめきた広場」に到着しました。
照りつける太陽と熱気に包まれ、まさに熱い夏のCARAVANが始まりました!
今回のCARAVANマガジンでは、前日のリハーサル&ワークショップからステージまでの様子はもちろん、大阪のパフォーマーたちとCARAVAN Performersの熱量、表現を共創していくプロセスをお届けしたいと思います。
これぞCARAVAN。
リハで、チームCARAVANの強さを見た。
全国を巡るCARAVANは、各地で活動するパフォーマーたちと共にステージを創り上げます。共創は本番前日からスタート。CARAVANの本質は全てリハに詰まっている、といってもいいのかもしれません。そんな前日のリハに潜入し、参加者のインタビューもお届けしながら、プロセスを見ていきます。本番もさることながら、リハもめちゃくちゃ面白いんです!
8月13日(土)午後14時過ぎ。会場となる福島区民センターにCARAVAN Performersと大阪チームが集まり、リハーサルがはじまりました。今回地元大阪から参加したパフォーマーは、アートファンクブレイキン2on2部門2連続優勝の実力派ダンサーSO−MAさん、ダンス大好きYASUさん、ダンス歴21年、ダンスで人を笑顔にすることを目指して活動中のMikuriさん、ダンススタジオFIPSTAから、踊ることが大好き!こはるさんとひなたさん、演劇集団MODEで舞台俳優や衣装制作としても活躍している宮﨑佳恋さんです。
「全員で円になりましょう!」演出と振付をしている伊豆さんの発声。自己紹介やダンスを通じてのワークショップ、コラボダンスの確認が始まります。「全員参加の自己紹介も大事にしています」とクリエイティブ・ディレクター森下さん。大阪のパフォーマーたちやCARAVAN Performersだけではなく、テクニカルチームや手話通訳者さん、音声ガイドナレーターから広報チームのカメラマンに私まで、誰も取り残すことなく伊豆さんがマイクを渡してくれます。参加者は皆、1人ひとりの話にうなずき、笑い、驚き、応援します。
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一緒にダンスをするうちに緊張がほぐれ、一体感が生まれていきます。全員で創りあげるという意気込みと、配慮。森下さんや伊豆さんはじめ参加者全員から、そんな優しさと熱量を感じました。チームCARAVANの優しさを、強さを、垣間見た気がします。
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今回のリハでは、アクセシビリティディレクターの西本さんから改めて、会場で提供している情報保障についての説明がありました。音声ガイドの役割や、それが情報保障としてどんな技術を使って提供されているかを、パフォーマー含め運営しているチーム全員で共有したいという西本さんの想いが伝わる場面でもありました。
西本さん
視覚障害のある方にも舞台を楽しんでもらうために、音声で舞台の状況、ステージセット、デザイン、衣装、動きにいたるまで、視覚情報をこと細かにナレーターさんに解説してもらっています。スマートフォンで簡単に聞けますし、ここでしか案内していないような情報もあるので、視覚障害者に限らずすべての方に楽しんでいただけると思います。他にも日本語字幕のリアルタイム表示や、ゆずりあい席、車いす席もあります。アクセシビリティ含めてチームとして頑張りますので、よろしくお願いします!
CARAVANの価値を多くの方に伝えるために、このようなアクセシビリティがあったのですね。
>True Colors Festivalアクセシビリティポリシーはコチラ
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リハーサル中、インタビューに応えてくれたのは、SOMAさん、YASUさん、Mikuriさんです。
SO−MAさん
−リハに参加されての感想は?
色んな人との交流が楽しかったです。実は、緊張していたの、わかりましたか?笑
−緊張していたと思えないほど、颯爽と踊っていらっしゃいました。突然ですが、ご自身のダンスを通して、夢や目標はありますか?
1人でも多くの方にダンスの楽しさを伝えられたらと思っています。自分には障害があって、同じように肢体不自由な方や知的障害がある方たちにも、ダンスは楽しいということを伝え続けていきたいです。
−明日のCARAVANに期待することは?
明日は大きな会場なので緊張もありますけど、1人でも多くの人に、障害があってもなくてもダンスは楽しいということを伝えられたらと思います。見ている人が楽しんでくれたらうれしいです!
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確かに、SOMAさんの踊りはかっこよさの中に、見ている人を楽しくさせる何かを感じました。それはお話頂いたように、「1人でも多くの人にダンスの楽しさを知ってもらいたい。」という想いからくるものなのですね。
YASUさん
−リハに参加されての感想は?
ステージは何回も経験しているので、あまり緊張はしなかったです。
ヤンキー感を出してダンスバトルにのぞみました。(※私はここで爆笑してしまいました。)最後はビシッと決めました。そういう感じのノリで明日も頑張ります!参加している皆で盛り上げられたらいいです。
−明日の意気込みを教えて下さい。
自分のダンスを見せるだけです!実は明日出演される、憧れの小森さん(こもり校長)にも会えるので、気合いが入っています!これまでの練習を生かします!
YASUさんの印象は、自由。激しく感情むき出しで踊るときもあれば、穏やかにポーズを決める場面も。「自由を表現するダウン症ダンサーYASU」なんて心の中で勝手に異名をつけている自分がいました。
つかず離れず、YASUさんを見つめている方がいらっしゃいました。YASUさんのお母さん・真澄さんです。せっかくなので真澄さんにもインタビュー。
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真澄さん
−いつもどういう想いでYASUさんを見ているのですか?
彼はダウン症で、障害によってできないこともたくさんあるんです。特にコミュニケーションをとる上で、他人との受け応えがうまくいかないこともあって、もったいないなーと思うことも多々あり、つい私が出ていってしまうこともあります。でも彼は大人なので、一人で物事を進めないといけない場面もある。失敗もするけどそれを周りも許していける環境になるといいな、と最近よく思いますね。
−YASUさんはいつでも自由に踊っている印象を受けました。
そうですね。ダンスの世界は、親は口出し無用だと思っています。ただ、せっかく作品を頂いても練習しないのは失礼なので、家では一緒に練習をすることにしています。
−明日のCARAVANに期待することは?
YASUにとってのビッグステージ。SO−MAさんのおかげで参加できます。YASUに、見に来てくださる方の気持ちを楽しくするようなダンスをしてくれたらうれしいな、と思います。そのために今日はしっかり寝かせたいと思います(笑)
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ステージにあがるパフォーマーの想いと、家族の想い。みんなの想い。それぞれの想いを表現しようと試みる。それが、True Colors CARAVANなのですね。
Mikuriさん
−リハに参加されての感想は?
リハーサルがこんなに盛り上がるとは思っていませんでした。とても楽しかったです!
−本当に楽しそうに踊っていましたね。普段どんなことを考えて踊っているのですか?
私は、障害があっても可能性があるということを伝えていきたい。車いすダンスには、車いすならではの技があったりします。私はそれを探究していきたいし、可能性があるよ!っていうのを伝えていきたいんです。
−うわー、かっこ良すぎて鳥肌がたちました……すごいです。明日のCARAVANに期待することはありますか?
まず、生まれ育った大阪に、True Colors CARAVANが来てくれて本当にうれしい。大阪で1番人通りが多いところで踊ることはもちろん、実は、パラリンピック前からかんばらけんたさんにずっと会いたいと思っていて、それが叶って、しかも共演することができて、本当に本当にうれしいんです!たまたま通りかかった人に、「あれ?車いすでもあんなことができるんや!」って足を止めて欲しいです。
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終始笑顔で伸びやかに、しなやかに。時に激しく。車いすを自由に操るMikuriさん。「車いすだからこそできる表現」。たくさん見せて頂きました。美しかった。
CARAVAN初心者の私にとって、リハで印象的な出来事がもう1つ。1人ひとり単独でダンスを披露し合い、讃え合う時間。皆がそれぞれのダンスを披露する中、中々踊り出すことができない地元パフォーマーのこはるさん。「とてもシャイな子なんです。」本番当日そう教えてくれたお母さんのあゆみさんが言うように、こはるさんは頑なに踊りません。しかし、ほんの数分の間、私が別の取材でその場から目を離し、再び視線を向けると、こはるさんがキレッキレのダンスを踊っていたのです。キレッキレの。かっこいい!いやいや、え?さっきまでは恥ずかしそうにして全然踊っていなかったのに、何が起こったのだろう?こはるさんとあゆみさんに「キレッキレでしたね。何が起こったんですか?」と率直に聞いてみました。
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こはるさん
マキさん(伊豆さん)が、背中を押し続けてくれたんです。周りのパフォーマーも応援してくれた。それで勇気を出そうって思いました。
笑顔で語るこはるさん。もう緊張はしていないようです。
あゆみさん
本人は緊張しています。親としては心配ですが、本人はがんばるって言っていました。Eriさんにインスタグラムで連絡したら、「がんばろうね!」って言ってくれたこともあり、勇気が出たみたいです。周りのみなさんが背中をいっぱい押してくれたから、こはるはステージに立てているのだと思います。
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「“色んな人とつくる“ということがいかに難しく、大変で、楽しいことなのか。」という、Vol.3出発式の記事の、森下さんの言葉を思い出す。
そういえば、このリハを通して、こはるさんを勇気づけ背中を押し続けた伊豆さんのように、CARAVAN Performers含むチーム全員が、大阪のパフォーマーだけではなく、リハでお互いをエンパワーメントし続けていたことに気づきました。
前回までのCARAVANで積み上げてきたもの。本当の意味でのTrue Colors CARAVAN in Osakaの始まりを感じることができたリハでした。
リハには、CARAVANの本質がぎゅっと詰まっていました。
もう一度言います。チームCARAVAN、強い。
▼True Colors CARAVAN、素敵なスタッフのみなさんの記事はコチラ!
Sapporo/CARAVANの中間地点で、スタッフの声を集めました
本日は晴天なり。さぁ始めよう。
CARAVAN Performers徳永啓太さんのDJタイムがスタートし、いよいよステージの始まりです。この日は14時と16時の2回、CARAVAN Performersと大阪のパフォーマーによるパフォーマンスステージが開催されました。
会場を包み込む心地よい音に惹きつけられて、お客さまがどんどん集まってきます。階段の立ち見の方も含めると、一気に400名くらいの方々が集まりました。会場の椅子は一瞬で埋まります。
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CARAVANバスが揺れ始めたと思うとクラクションが鳴り、メンバーが次々に降りてきました。もう、鳥肌ものです!
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テコエ勇聖さん、かのけんさん、かんばらけんたさんのポーズ、かっこいい!
リーダーのDAIKIさんが「このステージで繰り広げられるパフォーマンスを、見て、感じて、心と体全体で楽しんでください!」と呼びかけます!
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大阪のパフォーマーたちも登場し、スタートからそれぞれの個性的なダンスが、会場を一気に魅了し、盛り上がりを見せていきます。もうすでに熱い!
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パフォーマンスステージの見どころの一つである大阪パフォーマー vs CARAVAN Performersのダンスバトルが始まりました!
会場のみなさんは、かっこいい!すごい技!楽しい!と思ったら手話拍手(両手を上げて掌を細かく振る)とクラップで盛り上げていきます。
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まずは、SOCIALWORKEEERZのメンバー、魚河岸が大好きなノンバイナリーダンサー、なかさん!
対するは、インタビュー記事にも出てきた、Mikuriさんです!
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続いては、CARAVAN Performersからかんばらけんたさん!
そして大阪からは、SOMAさん!
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熱いバトルが繰り広げられたのは言うまでもないのですが、このバトルで印象的だったのは、終わった後のこのハイタッチ!バトルなのに、一緒に楽しんでいるように見えます。なんか、いいなー。
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CARAVAN PerformersからリーダーDAIKIさん!対するは、YASUさん!お互いに、闘志漲るパフォーマンス披露!
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対するは、YASUさん!お互いに、闘志漲るパフォーマンス披露!
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最後まで楽しく、心をこめて踊る宮﨑佳恋さんと、ひなたさん。お2人のダンスに、元気をいただきました!
種は蒔かれた。
さぁ、土をたがやし、花を咲かせよう。
お互いの健闘をたたえあったあとは、次のダンスナンバーCARAVAN Performersと大阪パフォーマーたちのコラボレーションダンスです!
「最後はみんなで楽しんでいきましょう!」リーダーのDAIKIさんが叫びます。ダイバーシティ&インクルージョンの種をまき、この街に、みんなの胸に、これからの未来に花を咲かせるプロジェクトのCARAVAN。そんなCARAVANならではの、種から芽が出て花が咲くダンスで、会場は一体感に包まれます。みんな踊っていましたね。私も踊っていました。
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パフォーマーたちの最高の笑顔が全てを語っています。
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パフォーマンスステージ、ラストMCのリーダーDAIKIさん。
あ、やっぱり泣いた。リアルで見れてうれしいです。今日はステージ1回目から泣いていました。
DAIKIさん
今回は東京から数えると5つ目の都市になります。僕たちは見ての通り、性別も、障害も、何より、パフォーマーとしての表現の仕方が1人1人違います。それは決して何かができないからこのパフォーマンスをしているのではなくて、僕らだからこそできるパフォーマンスを築き上げて、それぞれ自分のマインドを持ってステージに立っています。また皆さんといつお会いできるか分かりませんが、僕たちは種を蒔きに全国を回っています。今日のこのイベントを見て、感じて、聞いて、胸にしまって、持って帰って、「あんなことあったな」とか、「ああいう人がいたな。」とか、ほんの少し皆様を元気づけたり、これからダンスを始めたいと思ってもらえるきっかけの種であればうれしいし、花を咲かせて欲しいと思います。できないことなんか、何一つないです。知らないことを恐れないで下さい。知らないことは悪いことじゃないし、障害のことも知っていくのが1歩目だと思います。今日をきっかけに、何かしらの色を塗ることができたら僕らはすごくうれしく思います。今日のことをできれば忘れないでいてほしいですが、何かを心にしまって、明日から皆さん元気よく生きていってください。本当にありがとうございました。大阪楽しかったです!!
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それにしても、熱い、優しいメッセージ。私も思わず泣いてしまいました。自分の中にも、種が蒔かれた瞬間です。
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途中、ステージ袖で出番を待つパフォーマーたちの姿も見えたのですが、その雰囲気だけでも良いチームということが伝わります。まるで昔から一緒に踊ってきたチームのよう。様々な境界が溶けていく、表現が、それを溶かしていく。
今回2回のパフォーマンスステージを見て、流れは同じなはずなのですが、ステージ上のパフォーマーたちの表現が別物のように見えました。
会場も、スタッフも、私も、1回目とは違う胸の高鳴りを感じ、見る時間やタイミング、それぞれの心の動きで、こんなにも違いがあるということを、表現というものの深さを、体感することができました。生のパフォーミングアーツの魅力、それは、1回限りということ。たとえ同じ流れのパフォーマンスが同じステージで何度おこなわれたとしても、まったく同じものは2度と見ることができないということ。そんな特別な時間、空間を、皆さんにもぜひ、味わって欲しい。CARAVANは、生き物です。
CARAVAN Performersのラストパフォーマンス。
17時30分。ゲストパフォーマンスの時間です。1日に3回もCARAVAN Performersのパフォーマンスを見ることができるなんて、もう、一生の宝物です。
3回目もかっこいいHARUKIさんのヒューマンビートボックスと、DAIKIさんの力強いダンス!
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バレエダンサーのEriさんは、音に乗って流れるように踊ります。美しいなー。
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音遊びの会の後藤佑太さん・永井崇文さんとCARAVAN Performersのコールアンドレスポンス。まさか顔を使った表現が出てくるとは。後藤さんのアニメーションにでてくるかの有名なネコとネズミのような表現に、CARAVAN Performersも、楽しみながら応じています。この表現は後藤さんが楽しんできるときのパフォーマンスなんだと後から教えてもらって、自分もその場に一緒にいられたことがうれしくなりました。
なんでもあり。
ありのまま。音遊びの会の表現がすごい。
CARAVAN最後を飾るのは、演奏スタイルや表現のジャンルをこえた自由な即興演奏が特徴の、音遊びの会のゲストパフォーマンスです!今日は総勢50名近いメンバーから14名の選抜メンバーの参加です。
音遊びの会とは
2005年結成。知的な障害のある人たちを含むアーティスト大集団。演奏やスタイルや表現のジャンルを超えた自由な即興演奏を軸に、ワークショップやコンサートなど様々な活動を重ねている。17年経った現在も月2回のワークショップを地元、神戸にて継続中そして進化中。関西を中心に、北海道、東京、水戸、島根、山口、宮崎など遠征公演も多数。2013年におこなったイギリスツアーの模様はNHKにてドキュメンタリー番組として放送。2021年11月大友良英プロデュースによるスタジオ録音アルバム『OTO』リリース。今秋、野田亮監督によるドキュメンタリー映画 『音の行方』公開予定。予定調和を許さないその音楽性は、見るものを釘付けにする。
オフィシャルサイト
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いつの間にか始まっていた、ギターボーカルの吉見さんのギターの音と不思議な言葉の連続。低い声で、言葉としては聞き取れない言葉を連続的に発する。「ふぁいと。ふぁいと」と聞こえる言葉を繰り返す。またいつの間にか、渡瀬さんのピアノ、永井さんのドラムとのセッションが始まっている。「ふぁいと!ふぁいと!」音量がだんだん上がり、激しさを増す……正直、私はとまどった。初めて見る、聞く、感じる表現だからだ。でも、5分間ほどの間、ずっと目が離せない。中毒性がある。これが「予定調和を許さない表現」なのか。面白い!
スタートから、衝撃の一言でした。
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そんな音遊びの会のゲストパフォーマンス前、SOCIAL LOCKS!課外授業にも参加していた代表の飯山ゆいさんにインタビューしました!
飯山ゆいさん
―音遊びの会の表現とは、どんなものですか?
私たちの表現には、統率されたパワーはありません。そもそも1つにまとめるということを、捨てています。ショーとして、見せ物として、いつも確実にいいものを見せられるというタイプのものでもありません。
私たちの表現は「どうなるかわからない」ということの中を、パフォーマー自身も、そしてお客さんも進んでいくこと。予定調和があるわけではありません。こんな音が返ってくるはずじゃなかったのに、という裏切りもたくさんあります。でもその裏切りも必然で、どんな音の返しも、答えも、間違いではないんです。日常の会話では、お互いに投げたものに対して返して、それに対してまた返して、ということが常におこっている。それを私たちはステージ上で表現しているということです。
ー正解みたいなものを、手放しているということですね。
そうですね。何が返ってくるかわからないけど、何が返ってきてもいいや、という状態でいると楽です。思いもよらないことが起こるのが面白いし、その積み重ね。もちろん、障害があるがゆえに普通の応えができないメンバーもいますが、いわゆる健常者と言われる私たちでも普通の応えを返さなくても大丈夫、という感覚を共有しているのだと思っています。
―イベント前、今のお気持ちをお聞かせください。
広いステージで通りすがりの方もいて、偶然私たちの表現を見る方がいると思うと、いつもの私たちのステージとは違い、楽しみですね。予想ができないステージですし、メディアにのりやすいような見所はないかもしれませんが、「何か起こるかも。」ということに、皆さんは注目されると思います。その時に出てくるものを、そこにいる人と一緒に見る、そこには、何かお客さんと相互に交換されるものがあります。ふと、そういう反応がお客さんから出てくることがあるので、楽しみです。17年やってきた中で、メンバーたちのパフォーマーとしての「見せたい」という意識の高まりもあり、それを受け取って頂けることもあるのではないかと思います。
―個性豊かなアーティストがまぜこぜになると、どんなことが起こると期待しますか?
突発的にその場で現れる、普段見ていないことが起こることがあります。いつもトロンボーンを吹いている50代のメンバーが、いきなり踊りだしたりとか(笑)
パフォーマンスに見えないものも、私たちは大事にしています。パフォーマーの中には、ただ「いる」だけなのか、音を聞いているだけなのか、際どいところでステージに立つメンバーもいます。でも、その姿をお客さんが見ていたら、「いる」というパフォーマンスに見えてくる。それがステージの醍醐味であり、感動するところです。ある意味そういうことを、期待しているのかもしれません。それは瞬間的なことで、受け取り方によってはただ立っているだけですが、見応えがあるんです。そういったメンバーに、「存在」という演奏パートを割振ることもあります。
―とても興味深いです。今回のCARAVANの大きなテーマであるD &Iをどう捉えていますか?
私たちがやっていることは結果的にそれに近いのかもしれませんね。でも、そもそもそこを目指しているわけではありません。そこを理念として持っているわけではない。私たちがいつもやっていることは「面白がる」ということです。それは障害のある人の表現だけを面白がるのではなくて、障害のあるなしに関わらず誰かと一緒にやることを面白がるということ。マイノリティの方の価値、面白さ、凄さを見直そうというだけではなく、自分自身を含めた全ての人の「そのまま」がよくて、価値があって、面白い。自分を含めてのD &Iだと思っています。
―色んなイベントに参加される中、CARAVANに特に期待することはありますか?
事前にしっかり準備をして作り上げてくるCARAVANのステージの中に、「準備をしない」私たちが入ればどうなるんだろうという楽しみはありますね。多分、お互いに歩み寄るんだとは思います。
―即興性の高いステージを演出するコツはあるのでしょうか?
演出する立場であっても演者と同じく、その場で起こることを柔軟に受け入れる気構えを持つことです。即興演奏のポイントの一つは、互いに終わりを見つける、ということです。メンバーたちは17年間やってきて、それぞれの感覚で終わりを見つけることができるようになってきました。
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次は関本さんです。「らーらーらーららーらー。なーなーなななーあー。」と歌い出します。智基さんがオルフティンパニという太鼓を叩く。
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そこに出てきたのは、里紗さん。関本さんの歌は続いていく。立って前を見つめ続けている。そこに西さんのピアノの音が混じる。様々な楽器の様々な音が混じる。里紗さんは立って微笑みかけている。立っているだけ。これが、飯山さんの言っていた「存在」というパフォーマンスか。目が離せない。里紗さんがそっと去っていく。
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新たなセッションが、佑佳さん(ドラム)、鈴木さん(エレキギター)、佑太さん(カシオトーン)で組まれたユニット「YMY」によって続けられる。それにしても、色んな楽器があるものですね。
▼ちなみに、音遊びの会の当日の楽器リストはこちら
ドラムセット/オルフティンパニ/木琴/鉄琴/エレキギター/カシオトーン/ボンゴ/スリットドラム/小物楽器/カホン/尺八/トランペット/電子ピアノ/鍵盤ハーモニカ
自分のTrueColorとは何か?という問い
するとCARAVAN PerformerのHARUKIさんがいきなりセッションに参加!乱入?「なんかすごいなー」と言いながらギターを見つめる。ヒューマンビートボックスも混じる。「これ何?」と楽器を1つ1つチェックしていく。音遊びの会のメンバーも全員パフォーマンスに入る。CARAVAN Performersも入ってきた。全員のパフォーマンスセッション。混沌の始まり。セッションは続く。
「色んな人がいて面白いなー」HARUKIさんのコメントも続いていく。遊んでいるように見える。真面目に見える。バラバラに見える。まとまっているように見える。楽しそうに見える。没頭しているように見える。踊っているように見える。踊るのを止める人もいる。単なる行為に見える。自由に見える。何かが始まる。何かが終わる。何かが続く。わからない。わかった気もする。解釈しようとすることをやめる。ただ見る。「これいつになったら終わるのかなー。やりすぎじゃない?」とHARUKIさん。長く続く混沌。ピアノの音で収束していく。誰かが意図したのかもしれない。ピアノに音を合わせ、踊っている。すると、これまで踊っていた永井さんが、ハンドサインで指揮を始める。即興での指揮に、パフォーマンスは一気に終わりへと向かう。
終わりが近づく予感がする。「即興演奏のポイントの一つは、互いに終わりを見つけることです」と言っていた飯山さんの言葉を思い出しているうちに、ステージが終わった。
再現不能、いまここにしかないセッションを見ることができて、とても幸せでした。
音遊びの会の皆さん、ありがとうございました!
今回は、「SCHOOL OF LOCK!」番組内の、True Colors Festivalとのコラボレーションコーナー「SOCIAL LOCKS!」課外授業に、ゲストとしてこばらブラスさんもご参加くださいました。
課外授業終了後、こばらさんにコメントをいただいたのでご紹介します。
課外授業の内容が知りたい方は、こちらの記事もご覧ください!
こばらブラスさん
―SOCIAL LOCKS!に参加した感想は?
障害があったり、マイノリティだったり、みんな色んな特徴を持って生きていますよね。テキトーに「大変だよね?」と寄り添うのではなく、1歩踏み込んだことを聞けるのが、SOCIAL LOCKS!のいいところだと思っています。単なるお涙頂戴ではなく、障害のある方も、「私たちも楽しく生きています!」とちゃん表現できているところがいい。変な特別扱いがないのもいい。もっと話したかった!
―こばらさんにとって、「居心地の良い社会」とは、どんな社会ですか?
僕にとって居心地の良い社会は、自分が違うと思うことにも、目を瞑る余裕があるってこと。多様性というのは、我慢せずに自己表現を何でもしていいということではなくて、実は、自分と相容れない価値観の人に対して、むやみやたらに関わって変えようとしないことだと思っているんです。我慢しない社会ではなくて、少し我慢することになる社会。全部をわかり合うというよりは、わかり合えないところをある程度諦める社会だと思っています。自分にとって居心地の良い、たくさんの小さなコミュニティに属せばいいと思います。そして少しずつそんな社会になっていると思いますね。
―CARAVANへの期待をお聞かせ下さい。
「知っている。」というだけで、何かが変わる。CARAVANのような知る機会があった方がいいと思います。CARAVANに足を運んでくれる人が、もっともっと増えて欲しいですね。
CARAVANは次の地へと向かいます!
歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツを通じて、障害・性・世代・⾔語・国籍など、個性豊かな⼈たちと⼀緒に楽しむ「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭」を、⽇本全国に広げる新たな取り組み「True Colors CARAVAN」。
お次の地は北九州へ!
北九州エリアのみなさま、2022年9月11日(日)にぜひ、遊びにいらしてください。パフォーマーと一緒にCARAVANを盛り上げていただけたらうれしいです。
>True Colors CARAVAN in Kitakyusyu詳細
取材・執筆:天野雄一郎(True Colors CARAVAN広報チーム)
撮影:鈴江真也
取材日:2022年8月13日、14日
協働作業でつくられる音楽
ギタリスト・ターンテーブル奏者・作曲家・映画音楽家・プロデューサー/ True Colors BEATS出演者