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Can-Do Musos Festival 2021:音楽があなたの中にあるとき

By サリナ・サハリ

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2021年9月13日

True Colors Festivalアシスタントプロデューサーのサリナ・サハリによる、第1回Can-Do Musos Music Festivalのレビュー。

世界中から届けられた障害のある人による音楽の祭典「Can-Do Musos Festival 2021」のYouTube動画

音楽は、解毒薬、癒し、もしくはセラピーになりうるものです。力を与えてくれるものであり、制限はありません。 この「制限がない」という信念のもと、障害のあるミュージシャンの世界的な声を伝える「Can-Do Musos」は、すべてのミュージシャンに夢を叶えるチャンスがあるべきだと考えています。 この非営利団体は、2013年に、障害のあるミュージシャンが直面する壁について、ミュージシャン同士で話し合ったことがきっかけで設立されました。それは、「障害(disability)」という言葉が「能力がない(inability)」という意味で理解されがちであることに気付いたことでした。そこで設立者たちは、「チャレンジ」という言葉を使うことにしました。チャレンジは克服して打ち勝つことができることを誰もが理解しているからです。Can-Do Musosは、世界中のチャレンジングな(訳注:ここでは「挑戦的な」と同時に「障害のある」の意)ミュージシャンを支援しており、現在、そのグローバルファミリーは36カ国350人以上のミュージシャンで構成されています。

希望のメッセージと募金活動の一環として、Can-Do Musosは2021年5月、20カ国60人のミュージシャンによる初のオンライン音楽フェスティバルを開催しました。この音楽祭では、目に見えるもの見えないものに関わらず、生まれつき、あるいはトラウマ(訳注:地震や戦争被害、災害、事故、性的被害など、その人の生命や存在に強い衝撃をもたらす出来事)の結果、または人生のある時点で診断された、様々な障害のあるミュージシャンが紹介されました。この模様は、Can-Do MusosのYouTubeチャンネルで見ることができます。

私がCan-Do Musosに出会ったのは、True Colors Festivalの最新ミュージックビデオ『You Gotta Be』のアウトリーチ活動(訳注:さらなる展開を狙った活動)の一環でした。
You Gotta Beに出演しているアルヴィン・ロウや、2020年のミュージックビデオStand By Meに出演しているスパーシュ・シャー、トニー・ディーもCan-Do Musosのグローバルコミュニティの一員です。彼らのように同じ理想を共有し、True Colors Festivalと同じように、よりインクルーシブな世界を目指して旅をしている人たちの存在を知ることができたのは素晴らしいことでした。私がこのフェスティバルを観ようと思ったのは、好奇心からでもありますが、主に、音楽はすべての障壁を越えうるもの、かつ力を与えてくれるものであり、才能はその形や形態にかかわらず尊重されるべきだと確信しているからです。

バラードからエレクトロニック、ブルースからロックまで、さまざまなジャンルの音楽を、ディジュリジュや洗濯板、ワイングラスのような日用品など、誰もが知っているものからあまり知られていないものまで、あらゆる種類の楽器による演奏で観ることができます。

この音楽祭では、オリジナル曲やカバー曲のライブ演奏の録画とミュージックビデオを組み合わせていました。ソロでもバンドでも(障害のある人もない人もいます)、それぞれのクリップの最初と最後に、名前、障害の種類、出身地が表示されます。彼らの才能に焦点が当てられていますが、私にとっては、彼らにどんな障害があるかを知ることも等しく重要なディテールです。目には見えない障害についてのことや、一般的ではない用語、あるいは医学的な用語が使われていることで、障害を理解するのに役立ち、教育的です。さらに理解を深めるために、演奏を聴きながら簡単なネットリサーチを行いました。読んだことをすべて覚えているわけではありませんが、そのちょっとした知識が、特にTrue Colors Festivalでの私の役割である、今を生きるさまざまな人々とのつながりにおいて重要なことなのです。

Can-Do Musosチームの記念写真

これは、ただ才能を紹介するだけの音楽祭ではありません。ミュージシャンたちが自身の個人的な語りやミュージシャンとしての生活の知恵を通して、日々の課題に挑戦し成し遂げるために共有できる空間を創造しました。カナダ出身のダブルスライドギタリスト、マイク・ナゴダは、脳性麻痺のため、ギターを持って手をコードの形にするのが苦痛で、ギターを弾くことができなかったと話してくれました。ラップスチールギターでさえもメジャーコードしか弾けず、他のスキルも発揮できないため限界を感じていたところ、地元のブルースミュージシャンが発明したダブルスライドシステムに出会いました。アメリカ出身のブランドン・クルーズは、多発性硬化症を患っており、プロのドラマーとして活躍するために、さまざまな工夫を凝らしています。今回、彼の息子とのデュエットでは、コンガを演奏し、マイアミで人気のあるアフロ・キューバンのリズムを即興演奏しました。

他にもこのオンライン・フェスティバルでは、多くの刺激的かつ驚くべきパフォーマンスが行われています。例えば、ザイナ・アレカットさんは、ベッドの上でチューブにつながれた状態で、難なくギターを演奏しています。子供の頃にネマリンミオパシーと診断され、18歳で視力を失ってからも、アルバム『Mind Journey』に収録されている『Beasts of Wonder』のような幻想的な中世風の曲を作ったり、彼女のギター演奏への情熱は止むことがありませんでした。ギニア出身でポリオを克服したシディキ・コンデは、思わず踊りだしたくなるようなアフリカの楽器を演奏しています。生まれつき脳性麻痺とてんかんを患っているダニエル・セグレスの演奏には思わず歓声をあげました。彼によるLMFAOのParty Rock Anthemの演奏は、彼が自分の部屋で演奏していると隣人から苦情が来るのではないかと心配になるほどでした!

プロのドラマーであり、2歳のときに負った火傷を生き延びたダン・カロの言葉は、特に力強いものだと思います。「手と指を失い、頭の先からつま先まで傷だらけになりました。酷い状況でしたが、私は生き残り、そしてそれだけではなく、育つことができました。そして、音楽に出会いました。私は人生を通じて音楽を薬のように利用していて、その薬を毎日服用しています。 世界で最も偉大な都市のひとつであるニューオリンズで、職業として音楽を奏でることができるのはとても幸運なことです。私はここにいて、あなたはそこにいる。私たちは一緒にいるのです。自分を愛し、自分を知る。そして、できる限りのベストを尽くしましょう」

パフォーマンスの録画とミュージックビデオを組み合わせたこのようなフェスティバルを開催する上で、多くの挑戦的課題のうちの一つは、視聴者が異なるレベルの映像品質を経験するということです。あくまでも焦点を当てているのはその才能と音楽ですが、これは次回以降の課題として覚えておくべき点でしょう。

この音楽祭に登場するミュージシャンたちは、希望は力強く、自分を信じることは力になるということを実証しています。やればできるという気持ちがあれば、誰にも止められない存在になれるのです。

True Colors Festival

歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツ。

障害や性、世代、言語、国籍など、個性豊かなアーティストがまぜこぜになると何が起こるのか。

そのどきどきをアーティストも観客もいっしょになって楽しむのが、True Colors Festival(トゥルー・カラーズ・フェスティバル)です。

居心地の良い社会にむけて、まずは楽しむことから始めませんか。

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