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Meet The Family(TCFファミリーの素顔):那須映里

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2021年10月7日

【Meet The Family(TCFファミリーの素顔)】True Colors Festivalでは9月23日の手話言語の国際デーに合わせて、世界5カ国のパフォーマーによる、手話の多様性、美しさを紹介するSNS投稿を行いました。日本から参加いただいた手話エンターテイナーでろう者の那須映里さんに、手話の魅力や伝えたい思いについて伺います。

Q: 日本手話を身につけられた経緯を教えていただけますか?

家族全員がろう者のデフファミリーに生まれ、生まれた時から日本手話を母語とする環境に身を置いていました。1歳で日本手話で会話を始めていたそうです。なので、日本語を聞き、話し、育つのと同じように、私は日本手話を見たり、話したりと、母語として育つことで身につけました。私が幼いころはデフファミリーの親子であっても「手話で会話をすることはやめたほうがいい、口話で話したほうがお子さんのためですよ」という風潮がありましたが、それに流されず、日本手話で育ててくれた両親には感謝してもしつくせないです。

Q: デンマークに留学され、国際手話を使って生活されていた時期があったと伺いました。そもそも国際手話とはどのようなものなのでしょうか?

「国際手話」は世界中のろう者が一堂に会する場(国際フェスティバル、世界ろう会議、世界ろう連盟の会議など)でコミュニケーションをとるために作られた手話です。国際手話を使うと世界中のろう者とコミュニケーションがとりやすくなるのですが、国際手話は「言語」ではありません。日本手話は「Japanese sign language」と英語で書きますが、国際手話は「International sign」です。languageがない。国際手話は、各国の手話言語を借用して、ろう者の国際交流の時に使いやすくなるよう、改良されるものであり、文法や単語が流動的でルールも比較的自由です。今は少し共通認識が出来あがってきたように感じますが、まだ世界中には浸透していません。国際手話の研究をされている方もいらっしゃるので、また新しいことが分かるかもしれませんね。
国際的なイベントに参加すると去年はなかった国際手話が突然ポンと出てくる、去年までは流行っていた単語が突然消える、ということもよくあります。常にアップデートされていくので、自分の知識も更新していかないといけない。毎日が勉強です。

Q: デンマークで国際手話に触れたことで、それぞれの国における手話の位置付けについてなど、感じたことがあれば教えてください。

私がデンマークで学んでいた「Frontrunners」(フロントランナーズ)はろう者のリーダーシップ育成機関です。世界中から30代~20代のろう者が集まっていて、同期は私を含めて13名いましたが、おもしろいことに、国際手話だけで生活をして全員が同じことを言いました。「ああ!!私の国の手話だったら上手く話せるのに!!」です。国際手話は流動的であり、語彙数も少ないですから。
例えば「お盆」の日本手話はあっても、国際手話にはない。国際手話で説明するときは「日本の伝統的なもので、おじいさん、おばあさん、家族、亡くなった家族を想い、祈ります。お墓を掃除したり、花を供えます。それが8月にあるのです。日本の慣習です、それがお盆です」と長く説明しないといけません。
中にはうまく 説明できないものもあります。

Q: 「お盆」のように地域の文化を別の文化の人に説明するのは大変ですよね。

フランス人の同期がよく言っていたのは「国際手話だと長い!フランス手話ではこれはこうなんだ!!(表現をする) この表現でおわり!!これがフランス手話だ!」というセリフ。
じゃあ、同期全体でこの単語の場合はフランス手話の表現に統一しようか、と決めるんです。こういうことができるのが国際手話の面白いところですね。
こうしたことが世界中のろう者の国際交流の中で起こって、国際手話がアップデートされていきます。それもあって国際手話に含まれている単語は各国の手話表現の借用がたくさんあります。国際手話で話していると、それぞれの国での表現がどうなっているのか気になってきて、「そちらの国の表現ではどう表すの?」という質問がよく飛び交っていました。国際手話は相手の国の手話表現を覚える足掛かりにもなります。国際手話も便利ですが、国際手話だけで会話をする生活をしていく中で、国際手話は国際手話であり、やはり自分が生まれ育った国の手話が好き、自分の母語である自国の手話が必要だ、と実感する機会が多かったです。これは「Frontrunners」の同期の多くも同じ意見が多かった印象です。

そしてヨーロッパに住むろう者に限らず世界中で言えることなのですが、手話言語が消えようとしている危機にあることを危惧する人が多かったです。人工内耳の普及、ろう学校の閉校、様々な要因が絡み合って手話言語が急速に消えていく国もあります。日本も他人ごとではないのですが…こういったことが今、世界中でも起こっています。
その中で自国の手話を誇りに思い、そして手話を言語として必要としているんだ、と思って動く。消滅させないためにも動いていくという人が増えているのを感じます。
各国の状況や自分の意見を国際手話にのせてSNSで発信する人も増えました。
やっぱり手話はろう者にはなくてはならない大切な言語なんです。自分の意見を言ったり、全員でリアルタイムに理解し、笑ったり、芸術として昇華させたりできるのが手話です。

True Colors Festivalスペシャルライブの手話通訳チーム(那須さんは画面左から2番目)

True Colors Festivalスペシャルライブの手話通訳チーム(那須さんは画面左から2番目)

手話通訳を担当したメンバーで、それぞれの場面に相応しい手話を検討する様子(画面中央が那須さん)

手話通訳を担当したメンバーで、それぞれの場面に相応しい手話を検討する様子(画面中央が那須さん)

Q: ビジュアルバーナキュラー(Visual Vernacular)としても活動されています。ビジュアルバーナキュラーとはどういったものなのでしょうか?

ビジュアルバーナキュラーとは、手話の視覚的な表現のみを用い、詩やマイムの要素を取り入れ、緩急、リズム、ズーム、ロールシフト、視点の切り替えなどの技術を組み合わせて表現する視覚的なアートです。アーティストが表現したいストーリーや風刺、感情などが視覚的に伝わります。

ビジュアルバーナキュラーを見ると、映画のようなシーンが浮かぶほど、アーティストは、動きを利用して異なるキャラクターや物体に変身し、ストーリーを構築することができます。ビジュアルバーナーキュラーは「VV」と省略して言うことが多いです。VVができるのも手話の魅力の一つです。

那須さんによる広島への原爆投下の様子を伝えるVV(世界ろう連盟青年部主催「VV Women」より )

Q: VVとして表現する時に、意識している点、力を入れている点などがあればお聞かせください。

ポイントは視覚的に世界中のろう者に伝わるかどうかで、それを念頭に自分の表現を考えていきます。
広島への原爆投下について取り上げたVVでは、電車の運転士のレバーを回すしぐさが世界に伝わるかどうか、迷いました。私が使ったのは日本的な表現で、もともとは私の海外の友人たちには通じなかったんです。でもそれを見せたい。そのために前後の表現を作り替え、 電車であることを先に伝えたうえで、レバーを回す動作を表す。そうすると伝わります。こんな風に気を付けて作りました。
また、手の向き、手を止める角度、スピードやリズムは雰囲気に合うのか、などにも意識しました。
例えば、海の「波」を表すとき、左手と右手を前に突き出します。左手と右手の位置がやや上下にずれていると、ろう者は気になって、これではVVが美しくない。上下にずれることのないよう、揃えることが必要です。私もまだまだで、「家」を表すシーンでは、父に「おい、家がななめになっているぞ」と言われました。私は角度を揃えるのが苦手なようで、そこを意識しています。

VVをアートとして見るみなさんも、スピード、リズム、角度、展開を意識すると面白いと思います。VVはInstagramやYouTubeでも世界各国のろう者がアップロードしているので、是非見てみてください。Visual Vernacularで検索すると出ると思います。

Q: 今年開催された東京オリンピック・パラリンピックなどをきっかけにテレビなどで手話通訳を目にした人も増えたように思います。表現者としての立場、ろう者としての立場から感じること、今後に期待することなどがあればお聞かせください。

そうですね、オリンピック、パラリンピックを契機にたくさんのろう者が声を上げ、ろう通訳(編集部:ろう者による手話通訳)が地上波で流れるようになったのも、今年からです。

手話がろう者の大切な言語であり、必要であることが、以前と比べて社会に浸透してきたように感じます。例えば、美術館や博物館、展覧会、映画の案内などにもろう者による手話翻訳を付加した映像が増えてきました。
私自身も、展覧会や映像などの音声を手話に翻訳する依頼を多く受けるようになりました。主催者が手話を付加させようと思ってくれることが増えてきたのが、本当にうれしいです。ろう者にとって第一言語は手話であり、第二言語の日本語を読んでもピンとこない方もいらっしゃいます。この時に手話が日本語字幕の隣にあると、ろう者は手話を見て理解することができます。日本人が日本語で理解をするように、ろう者にも手話で内容を理解する権利があると思います。

今後に期待したいことは、日本の公用語として日本手話をぜひ認めてほしい。日本手話が日本語と同等の立場になり、ろう者がその権利を享受できるようになってほしいですね。また、手話通訳があらゆる場面につくことだけではなく、芸術面でもろう者の進出を期待したいです。ハリウッド映画やNetflix(ネットフリックス)でも、世界ではごく自然にドラマの中にろう者を登場させて手話を使って会話したり、物語を進めたりしています。
日本でもドラマや映画にごく自然にろう者が物語に登場したり、テレビ番組の出演者にもろう者がいたりとか、テレビや映画、芸術面で見ることが増えることを期待しています。
Netflixでは増えているので皆さんもぜひ探してみてください。

NHK『みんなの手話』(毎週日曜日19:30-19:55放送中)収録の一枚

NHK『みんなの手話』(毎週日曜日19:30-19:55放送中)収録の一枚

Q: 今後どのような活動をしていきたいと考えていらっしゃますか?

私自身、「ろう者と聴者が協働して対等な社会をつくる」と「日本手話を消滅させない」という2つを意識して活動しています。そのためには、日本手話を知らない聴者に対するアプローチと、ろう者・ろうの子供やその保護者へのアプローチの2方向が大切だと思っています。
聴者が日本手話を見る、ろう者を見る、関わる機会を増やすためには、NHK「みんなの手話」に出演したり、VVを表現したり、運営スタッフを務めている「ろうちょ~会」で企画したりしています。日本手話を覚えるとろう者と話すことができて、ろう者の世界の更なる深みに入れる、国内外のろう者と異文化交流ができる、世界が広がっていくその面白さが手話にあると思って、アプローチしています。

一方でろうの子供たちが日本手話で楽しめるよう、「しゅわえもんナイト」というライブイベントで表現したりもしています。他にも手話付加作品に出演して、ろう者が日本手話を見て理解する機会を増やしたり、ろうの子供が楽しめる企画を作ったり、ろう者や聴者が一緒になって楽しめるような機会を作っていくことを目指しています。それが、「ろう者と聴者が協働して対等な社会をつくる」につながると思っています。

また手話で表現する、VVをするなど表現活動もこれから増やしていきたいですね。Netflixのドラマに出てみたいな~関わってみたいなとも思うようになりました。Netflixにろう者が出て、日本手話で会話をしたり、ドラマの登場人物になったほうが日本手話の認知もひろがりますし、面白いんじゃ!?とも思っています(笑)。機会があればメールでも書こうかと考えているところでした。

Q: True Colors Festivalは多様性とインクルージョンを称える芸術祭として、特に海外に向けて「One World One Family(世界は一つの家族)」というキーワードでPRを行なっています。那須さんの考える「ワン・ワールド・ワン・ファミリー」について教えてください。

世界にはたくさんの人がいて、それぞれの考え方、それぞれの体、それぞれの言語、それぞれの人がいます。多種多様な人間、やや異なる側面を持つ存在が集まって共同体を形成し、複雑な世界を構成しています。異なることは我々人類をさらに進化させるファクターにもなると思っています。それは芸術的にも、科学的にも、言語的にも、人類がこうした”異なる”を全て抱えこんで世界を醸成する。みんなが同じ世界にいる。みんながみんなを必要としている世界、それが「ワン・ワールド・ワン・ファミリー」だと思います。

那須映里
1995年、東京に生まれる。デフファミリー。日本大学法学部新聞学科卒業。
2019年~2020年デンマークにあるFrontrunnersに留学し、ろう者のリーダーシップや組織活動について学ぶ。
帰国後は、NHKテレビ「みんなの手話」準レギュラー出演、手話普及活動、国際手話通訳、ろうの子どものための活動をするしゅわえもんスタッフ、ろうと聴者が交流するろうちょ~会、東京都聴覚障害者連盟青年部役員活動にも取り組む。
ビジュアルバーナキュラー(VV)パフォーマンス、手話表現者、手話エンターテイナーとして活動中。2021年2月に開催された世界ろう連盟青年部主催VVライブイベントにアジア代表として出場。

めざましテレビ×True Colors Festivalスペシャルライブ
True Colors FASHION 身体の多様性を未来に放つ ダイバーシティ・ ファッションショー:アーカイブ
NHK『みんなの手話』

True Colors Festival 2020/2021

True Colors Festival(トゥルーカラーズ フェスティバル)は、パフォーミングアーツを通じて、障害・性・世代・言語・国籍など、個性豊かな人たちと一緒に楽しむ芸術祭です。誰もが居心地の良い社会の実現につなげる試みです。

世界的な危機により、私たちは身近な人たちと引き離される経験をしています。でも、だからこそ人とつながること、共に楽しむことの大切さを再認識しました。

新たな環境で、アーティストと観客が、どうやって体験を共有し、共に楽しむことができるのか。みなさんと一緒に考えながら、プロジェクトを展開していきます。

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