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True Colors Festivalをともに作る仲間を紹介する「Meet The Family(TCFファミリーの素顔)」シリーズ。2021年3月に公開したTrue Colors FASHION「ドキュメンタリー映像「対話する衣服」-6組の“当事者”との葛藤-」では、さまざまな身体や精神を持つモデルと若手デザイナーが2人1 組になって、デザインの可能性を模索しました。今回はカイトさんと斎藤幸樹さんペアの言葉から、二人の中に生まれた「対話」の一端をご紹介します。
True Colors FASHION:2021年3月5日公開
Q: カイトさんが水泳を始められたきっかけはなんですか?
(カイト君のお母さん・エミさん)カイトは家で、目を離すと冷たくなっているお風呂に直ぐに入ってしまうんです。だからお湯を深くためておくと危ないと思って、いつも浅めにお風呂を入れるようにしていました。一日何回もお風呂に入るから、カイトはきっとお水が好きな子なんだなぁ!とも思っていました。そんな時にカイトの弟が通っている水泳教室にたまたまスペシャルクラスがあるのを知って、直ぐに弟と同じ水泳教室へ通わせるようになりました。今では週に5日はパラリンピック金メダリストを指導する先生の水泳塾に通い、また別に5日に1回はEMSで負荷をかけたトレーニングをしています。とはいえ世界大会も延期になり、モデルもやってみたかったというので、今回のTrue Colors FASHIONへの参加を決めました。
カイト君による太い線で力強く描かれたたくさんのデッサン。
Q: 今回の衣装の着想は、どんな風にして生まれたのでしょうか?
(斎藤さん)着てみたい服のデザイン画をカイト君に頼んで描いてもらったら、「ゼルダの伝説」のゼルダ姫の絵を描いてくれました。その絵をもとにして、綿と毛糸を縫い固めて、粘土細工のように服の形を作ったり、固めて細長く伸ばした綿を金太郎あめのように切り、パーツを作ったりしています。
Q: カイトさんからは、どんな反響がありましたか?
(カイト君のお母さん・エミさん)本人に今回のプロジェクトで何が印象に残っているか聞いてみたら「全部!」と話していました。「ゼルダも、絵も、お洋服も撮影も全部!」って。きっと、最初に思い描いたゼルダがどんどん洋服として形になり、着てみて、その後にティアラもリクエストしたら、またそれが仕上がってきて・・・。カイトにはプリンセスになりたいという強い夢があるんです。プリンセスと言えばティアラみたいな気持ちがあって、その夢が叶ったという気持ちなんじゃないかなと思います。さらに撮影では憧れている職業の一つである俳優さんになった気分ようなで、ゼルタ役を務めていました。好きなダンスも出来ました。もう全部が印象的で、忘れない夢みたな時間になったことと思います。
カイト君のカラフルなスケッチを机に並べて斎藤さん、エミさん、カイト君が打合せをしている様子。
Q: 斎藤さんが制作過程で粘土細工や金太郎飴のような手作業を盛り込まれた背景には、どんな思いがあったのでしょうか?
(斎藤さん)カイト君の無邪気な性格、トランスジェンダーであるということ、それとカイト君自身が着たいと思って描いたデザイン画など、カイト君の内面を意識しました。カイト君が描いてくれた「ゼルダの伝説」のゼルダ姫の絵をもとにして、カイト君が楽しんでくれるような服を目指しました。
Q: 斎藤さんとの話し合いの過程を、カイト君のお母さんはどのようにご覧になっていましたか?
(カイト君のお母さん・エミさん)2人は口数が少ない同士でしたが、私から見ると、何だか言葉を交わさずとも想いが繋がっているように見えました。カイトも「ゼルタのお話し、お洋服のお話しが楽しかった」と言います。カイトにとってのファッションは、「カラフル!」。ハッピーで自由、楽しいという事。観てくれた方々にも、そんなハッピーが伝えられたらいいなと思います。
完成した衣装を身につけてポーズをとるカイトさん。衣装はオレンジや水色やピンクなどポップな色使いとふわふわした素材感が特徴。
モデル/カイト
1997年生まれ。世界ダウン症水泳選手権大会に2度出場。2018年のカナダ大会では男子100m背泳ぎ・50m背泳ぎ ・男子200mメドレーリレーと、3種目のアジアレコードを更新。令和元年度第一回、第二回目黒区スポーツ表彰受賞。2022年ダウン症世界水泳で、背泳ぎで金メダル獲得を目指す。この企画で初めてトランスジェンダーを公表し、モデルデビュー。
デザイナー/斎藤幸樹
1990年青森県生まれ、青森県育ち。東北芸術工科大学プロダクトデザイン学科インテリアデザイン専攻、2013年に卒業。その後「ここのがっこう」でファッションを学び、渋谷ファッションウィークに参加。制作した服がVogue talentsに掲載される。