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Meet The Family(TCFファミリーの素顔):青木 透

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2021年6月14日

【Meet The Family(TCFファミリーの素顔)】
True Colors Festivalフェスティバル・プロデューサーの青木透さんの仕事は、「パフォーミングアートで世の中のマイノリティに対する意識に変革を起こす」というビジョンに向かって、何百人もの人々を軌道に乗せていくこと。TCF発足から現在までの歩みについて、聞きました。
 

Q: True Colors Festival(以下、TCF)は、日本財団が海外における障害者支援活動の一環として行ってきた「国際障害者芸術祭」を原型に、2019年9月よりスタートしました。青木さんとTCFとの関わりは、どこから始まったのでしょうか?

日本財団の経営層と共に、2018年3月23日シンガポールで開催した「アジア太平洋障害者芸術祭~True Colours~」に参加した夜からです。ホテルに向かう帰りのバスの中で「2020年の東京のフェスティバルを形にするのは大変だ。シンガポールでここまで素晴らしいものをやってしまったんだから。」という会話が始まり、ホテルのバーで深夜までどうしたらシンガポールを超えるフェスティバルができるか話していたのを記憶しています。それから2ヵ月後、日本財団の中にTrue Colorsチームという新しい部署が立ち上がり、フェスティバルの方向性についての内部での議論や組織づくりから仕事を着手しました。

2018年にシンガポールで開催された「アジア太平洋障害者芸術祭~True Colours~」の様子。出演者が一同にステージに集まり、華やかにクロージングを迎えた。

2018年にシンガポールで開催された「アジア太平洋障害者芸術祭~True Colours~」の様子。出演者が一同にステージに集まり、華やかにクロージングを迎えた。

Q: チームが発足した2018年から、TCFがお披露目された2019年9月までには、どのような道のりがありましたか?

チーム発足当初は、フェスティバルの要件を整理し、企画コンペを開催することである程度は実施体制や計画の骨格が出来上がるのではないか、と楽観的に考えていました。しかし、誰にとってもアクセスができ、障害のある人をはじめさまざまな背景を持つアーティストが共演し、多彩なジャンルのパフォーミングアートを見せるフェスティバルをこれだけの規模で行うのは、おそらく世界でも初めてです。プロデュースをした経験がある人はおそらく誰もいません。誰と一緒にやるにも、シンガポールで先駆けとなる取り組みを現場で観た自分がしっかりと手をかけなければ実現できない取り組みなのだと、後から気がつきました。
コンセプトや方向性に関する議論を始めてから、おおよそ事務局と呼べるような組織ができ、実際に行っていく内容の骨格ができて世の中に発表するにいたるまでに、およそ1年間の時間を要しました。その中でご縁を頂いた様々な人と同時並行で議論を行い、形になってきたものからイベントとして全体計画の中に位置づけていくという、泥臭い作業を行ってきました。

Q: 2019年のスタート以来、TCFではコンサート開催を最終目標に定め、ダイバーシティの機運を高める目的でダンス、音楽、ミュージカル、演劇と、幅広いジャンルの舞台芸術イベントを実施してきました。このようなラインナップは、どのように選定されていったのでしょうか?

「十人十色」という言葉のとおり、世の中にいる人の数と同じだけ、背景や個性があります。「多様性」を掲げる芸術祭として、それぞれのイベントで多様性にまつわるどんなテーマを取り上げるのかを設定することにしました。テーマ設定は非常に難しい課題でしたが、多様性を取り巻く日本国内と世界の情勢や課題を検討した上で、障害、性、言語、国籍、世代の各テーマを網羅するように企画を進めました。中でも障害は、ダイバーシティに関する議論で先行している欧米でも、人種やジェンダーと比較して抜け落ちがちであること、日本財団がフェスティバルに先立って実施した意識調査においても、LGBTQや見た目が外国人らしい人等と比べても「障害者に対して心の壁を感じる」という人が最も多かったこと等も踏まえて、最も重点を置き多くの企画を行いました。

Q: フェスティバル・プロデューサーとして、具体的にどのような役割を担っていますか?

総合プロデューサー・樺沢が打ち出す大きな方向性やさまざまな障害の当事者、LGBTの当事者の方々等のご意見を踏まえて全体計画をつくること、そして、専門性やスキルを持った組織や個人をコーディネートして企画から実行までを担える体制を作り、動かしていくことが私の役割だと考えています。チームの構成員や協力してくださる方々に対して方向性を常に明確に示し続けることが大切だと考えています。そのために、個別のイベントのアイディアを出すこともあれば、アーティストや協力者の人選、イベントの進行に関する部分まで提案することもあります。

Q: 2020年3月末には、TCFは新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑みて以降に予定していたイベントを全て中止・延期を発表しました。その時はどのような気持ちでしたか?

2019年9月に最初のイベントを開催した後、2020年の7月のコンサートに向けておよそ1年間にわたりさまざまなイベントを展開するというのが当初の計画でした。中止決定をしたのは2020年3月後半だったので、ちょうど中間地点あたりで止まる形になりました。中止を決めた日には、マラソンの途中で突然走ることをやめてしまったような、なんともいえない虚脱感がありました。
投じた時間や労力の分だけ、一緒に過ごした時間の分だけ、人は対象に愛着を感じるものだと思いますし、それがなくなるのはきついことだと思います。でも別の見方をすれば、目指したことは達成できない限り、消えることもありません。中止決定直後に障害やLGBTの当事者である複数のアドバイザーの方々から「このフェスティバルとして発信すべきものの価値は、パンデミックが起きても変わらない。今だからこそできることがあるのではないか。」という励ましの言葉を頂きました。物理的に人が集まることが危険になった以上、従来のイベントという手段は見直さなければいけませんが、目的は変わりません。これまで汗を流してくださった方々の努力を無駄にしないためにも、目的の達成には熱を持ってこだわり、手段は大胆に見直す柔軟性や冷静さを持つことが大切だと思いました。

Q: 当初の計画では、2020年夏に実施予定だったTrue Colors Concertはどのようなものになる予定だったのでしょうか?

東京オリンピック・パラリンピックの開催直前期に、「One World One Family」というテーマでコンサートを行うことを目標に、2019年の初春から、シンガポールで前身となるコンサートを手がけたプロデューサーのオードリー・ペレラさん、音楽ディレクターのシドニー・タンさんとコンサートの方向性や準備のタイムラインについて協議を重ねました。世界には、人の数だけその人固有の歴史があります。しかし、障害のある人をはじめとしてマイノリティとされる人たちが舞台上で自らを表現する機会は乏しく、言い換えれば、これまでのパフォーミングアーツではこの世界の多様さを真に表現しきれていなかったとも言えるかもしれません。多様な背景を持つアーティストがさまざまな形でコラボレーションをしながら、ステージ上でまぜこぜな世界の可能性を表現するというのが大きなコンセプトで、世界中から100名を超えるアーティストが参加するコンサートになる予定でした。
2020年3月のTCF中止決定直前には、規模感や立地に加えて多目的トイレの有無や車椅子席の確保ができるかなども視野に入れて会場を押さえ、多様な背景や個性を持った世界の歌い手、楽器演奏者、ダンサー等の調査に着手しているところでした。

Q: True Colors Concertは2021年に延期され、パンデミック関連の規制などにより、再度2022年に延期されることになりましたね。1回目の延期と2回目の延期では、どのような違いがありましたか?

2020年3月末に決定した最初の延期の方が、はるかにショッキングだったことを記憶しています。当時、コンサートだけでなく、他の4つのイベントもキャンセルを強いられましたが、私は全ての催しの準備に深く関わっており、関係者のだれもが実現のために懸命に準備にあたっていたことを知っていました。そのような中で、大きな路線変更を受け入れることが困難な自分がいました。しかし、今回は違いました。関係者の多くの人が、企画段階から延期のシナリオを想定しながら仕事を進めてきたことを知っていましたので。
正直にお答えすると、今年(2021年)の2月末に当財団の会長がTrue Colorsコンサートをさらに延期すると決めたとき、ほっとしました。というのも、このコンサートは新型コロナウイルスによって先行きが不透明な中で、準備を進めていくにはあまりにも大きく複雑な催しだからです。私たちが意思決定をする以前に、参加予定だったアーティストからはすでにビザの発行や入国、入国後の隔離措置まで様々な事柄に対する不安が寄せられていました。クリエイティブチームと運営チームは、アーティストの懸念の直接の聞き役になりながら、先行きに対する彼ら自身の不安・感情とも折り合いをつけつつ、懸命に準備を進めてくださっていました。もし状況が良くなれば、今回の延期によって、コンサートをもっと多くの方に観ていただけることにつながるかもしれません。そう考えると、今回の決定は全ての人にとって良いものだったのではないかと信じています。


世界中がパンデミックにあった2020年6月に制作された、True Colors Festivalのミュージックビデオ「Stand By Me」。15の国/地域から46人のアーティストが集まり、世界の障害者コミュニティに向けて、希望、ポジティブ、インクルーシブのメッセージを発信した。

Q: 中止や延期や内容変更など、コロナ禍でTCFを続けていくにあたって、以前にはそれほど想定していなかった課題に直面することになりましたね。それでも活動を続ける秘訣はなんでしょう?3つあげてください。

  1. イベントを実施するフォーマットや時期など、変化を受け入れて対応するために十分な柔軟性を持つように努めること。
  2. 先行きの不透明さの中で、変更に対応し続けるためにも、スタッフひとりひとりと自分自身のモチベーションを維持するよう努めること。オンラインのイベントでは、お客さんと顔を合わせることができず、直接声を聴くことができませんのでこれが一層難しいと感じます。 
  3. どんな手段・フォーマットを採用しようと、達成しようとしているビジョンについてはぶらさず、一貫するように努めること。計画を変更し続けると、元の計画で達成しようとしていたビジョンを忘れがちになってしまいますので、意識して立ち返ることが必要だと感じています。 

Q: TCFでは現在、コンサートのテーマでもある「One World One Family(世界は一つの家族)」というキーワードで、特に海外に向けてPRを行なっていますね。青木さんは、このキーワードにどのような意味を感じていますか?

「One World One Family」ということばは、2018年3月に開催されたフェスティバルの前身にあたる「アジア太平洋障害者芸術祭~True Colours~」で得た体験そのものです。当時、私は直接事業を担当しておらず、日本財団からの出席者の一人としてシンガポール・ナショナル・スタジアムで公演を観ました。外国人として、ほとんど知る人がいない会場に座っていたわけですが、コンサートを観ながら、この公演を実現した人やステージを温かく取り囲んでいる観衆のみなさんと自分は確かに人間としてつながっているものがある、と実感しました。私とTCFとの付き合いはそのときから始まりましたが、今もモチベーションになっているのはシンガポールで私自身が体験したあの瞬間を世界のできるだけ多くの人に共有したいという気持ちです。

青木 透
True Colors Festival フェスティバルプロデューサー/日本財団True Colorsチーム プログラムディレクター。早稲田大学第一文学部卒。シラキュース大学マックスウェル行政大学院(NY)国際関係学修士。2009年日本財団に入会。海洋グループにて「海と日本プロジェクト」の立ち上げや海洋教育事業を担当、2017年より国内事業開発チームで在宅ホスピスプログラム、障害者アート事業などを担当、2018年よりインクルージョン推進チーム兼True Colorsチームに。他のフェスティバルプロデューサーとともに、TCF全体の企画を指揮し、True Colors Concertの企画・制作を直接監督しています。趣味は運動、音楽、読書、家族と過ごす時間を大切にしています。

True Colors Festival 2020/2021

True Colors Festival(トゥルーカラーズ フェスティバル)は、パフォーミングアーツを通じて、障害・性・世代・言語・国籍など、個性豊かな人たちと一緒に楽しむ芸術祭です。誰もが居心地の良い社会の実現につなげる試みです。

世界的な危機により、私たちは身近な人たちと引き離される経験をしています。でも、だからこそ人とつながること、共に楽しむことの大切さを再認識しました。

新たな環境で、アーティストと観客が、どうやって体験を共有し、共に楽しむことができるのか。みなさんと一緒に考えながら、プロジェクトを展開していきます。

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