voice
※この記事は、「CINRA.NET」『サンティアゴ・バスケス×芳垣安洋が信じる、即興音楽の対話力』より一部抜粋して構成しています。
自分が音楽をやっているのは、「生きている意味」を見つけたいからなんです。つまり「この瞬間ここにいて、他の人たちと空間を共にしている」ということを実感するため。それによって「宇宙の一部である」ということを実感する。
そのためには別に音楽じゃなくても、例えばサッカーをプレイすることでも、トイレを掃除することでもいい。それでも宇宙の一部であることを感じることは可能だと思います。でも私は「音」が好きなんですよね。何故なら「音」は、そこに存在しているだけで美しく、意味があるからです。
私が即興をする時に考えているのは、「今そこで起きていること」の意味を、ちゃんと捉えられるようにすること。新しいものを生み出すことの必要性は全く感じていなくて。何故なら、すべては先人たちが試行錯誤しながら作り上げたものを、私たちは継承しているわけですよね。その代わり、そこで起きていること、その瞬間のコンビネーションやアンサンブルはもう二度と再現できない。それが起きた瞬間。その時の場所、その時の天気など、すべて異なる一回性の出来事ですから。
日本人は演奏家だけでなくオーディエンスも、そこで起きている「会話」に積極的に参加しているのを感じます。だからこそ演奏家も自由になれるのではないでしょうか。日本に来るたびに「そうか、私たちはこんなにも自由でいいのだな」と思っています。