voice
※この記事は、『ダイバーシティということばからはじまる無数の広がりを感じた〈True Colors BEATS〉の一日』より一部抜粋して構成しています。
西洋音楽にせよ即興にせよ原理主義的な考え方では、今日のDJの岸野(雄一)さんが今かけているような音楽はすばらしいとは言われないんじゃないかな。でもきっと今日みたいなイベントは、いいと思うんだよ。そしてこの良さはなんなのかといえば、古典的な西洋音楽や即興の良さとは別のもの。例えばアルバムという決まりきった作品形態のなかで物語が完結するのはすごく西洋美学的だと思う。だけど、音楽ってアルバムのなかで完結するだけじゃないよね。感じ触れあうための言語だと思う。
俺はある時期からそっちのほうに興味が移っていって、音楽がコミュニティにいかに機能するか、考えるようになったんです。それは同時に、コミュニティによって音楽が変わることでもある。俺は神戸で「音遊びの会」という障害のある子どもたちと演奏する活動をしています。それを続けているのは彼らから出てくる音が面白いのはもちろん、一緒に演奏することで音楽が変わっていくから。今年(2019年)の〈アンサンブルズ東京〉で取り組んだ「盆踊り」でも、踊りのリズムやテンポひとつとっても、演奏している人たちの協働作業で「いちばんいいのはこれでしょ」っていうのがつくられていくんですよ。音楽家の指示や伝統ではなく、ぼくらの盆踊りのリズムがつくられていく、その営みはなかなかCDにはならないよね。