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――ご自身も劇団で役者として演じ、インクルーシブな観劇サポートもされているそうですね。True Colors MUSICAL『ホンク!〜みにくいアヒルの子〜』のタッチツアーはいかがでしたか?
タッチツアーでは、衣装、大道具、小道具と3つのパートで説明する形式が新鮮で、なんて効率のいいやり方なんだろうと感心しました。私は個人的に実際に舞台の長さも把握して全体像を掴みたかったので、説明を受ける以外にも舞台上を歩いて、同伴の者に説明してもらっていました。私たちの劇団の観劇サポートは、来場者が着席した状態で舞台上にどんなものがあるかを音を鳴らしながら説明するんです。だから、今回のように自ら動けるタッチツアーと組み合わせたらベストかなと思いました。
――近年、美術館や博物館など「触れる展示」が増えてきた印象があります。最近の潮流なのでしょうか?
色々な助成などの成果もあるかと思いますが、なにより、「触る」ということや説明を加えるといろんな人が楽しめるんだ、という実感が世間に浸透してきている印象があります。目が見える見えない関係なく、展示ってそもそも触るのがダメなことが多いでしょう。「触れる展示」的なものは、30〜40年前からやっているところはやっていました。ようやく世間的に認知されてきたのかもしれませんね。視覚障害者の間でも、積極的に興味をもっていた人以外にも「なんだか面白いらしいぞ」っていうムードが伝わっていっている印象です。
――今回の舞台のような、パフォーミングアーツのシーンも同様でしょうか。展示などとは要素が異なるので難しいのではと思うのですが……
一部の劇団さんではやってらっしゃいましたよ。プロダクションの規模にもよりますが、コアなファンがいてこそ実施できるという印象です。
私、実は何を隠そう30数年来の宝塚ファンなんですけど、ずっと音だけで楽しんできました。先にスタートする兵庫公演のプログラムを購入して、点字翻訳してもらって、東京公演の前に予習してから観劇するんです。叶うなら、衣装とか触ってみたいですよ。豪華な衣装についている羽のふさふさ。制作の方にリクエストしたいと思いながらも、やっぱりそれなりのエネルギーがいるし、今まで本当にいろんなことを諦めてきてしまいました。でも、ちょっと働きかけてみようかなって今心が揺らいでいるところです。