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ダンサーの森田かずよさんは、スーパー銭湯で入浴中に「返金するので出て欲しい」とスタッフに言われたことがある。
「浴室内を這うのは衛生上良くない」という理由だ。
生まれつき二分脊椎と側湾症があり義足で暮らしている森田さんだが、障害を理由にダンスを諦めたり、普通の生活を諦めたりしたことは一度もない。そんな彼女でもそのスタッフのあまりの言葉にショックを受け、抗議もできずにその場を立ち去った。
「それまで何度か公衆浴場や温泉などを利用したことはありましたが、こんな事を言われたのは初めてでした」そう話す森田さんの脊椎には湾曲があり、その障害は見た目にも分かりやすい。立ったり歩いたりするには義足が必要だ。
これは数年前のことだが、障害のあるダンサーとして長年支援活動に取り組んできたにもかかわらず、差別を受けたという事実はいまでも心に深く刺さっている。 「人権差別を受けた時に声を上げることの難しさを実感しました。残念ながら今の日本社会は、たとえ何か差別を受けてもなかなか声を上げにくい環境にあります」と語る。
社会における障害者への理解や受け入れは進みつつあるが、依然として問題点も多い。例えば、障害に対する配慮や改善して欲しい点を依頼しても「特別扱いしないので」という冷ややかな返事が返ってくることもあると言う。
「特別待遇=ズルだと考える人もいますし、甘やかしや同情とも混同されてしまいがちです。でも、平等に扱う事が必ずしも公平につながるわけではありません。障害のある私たちが必要なのは、少しばかりの思いやりと理解です」
森田さんの歯がゆさの種は尽きない。友人と行動を共にすると、店員や駅員は彼女ではなく、隣りにいる友人に話をする。
「私は障害者であり、友人は介護者に見えてしまうんでしょう。ひとりの大人として扱われていないように感じることがしばしばあります」と語る。
延期となった2020年の東京オリンピック・パラリンピックが後押しとなり、都市部の公共交通機関のインフラ整備には少しづつだが改善も見えてきている。
それでも改善できる点は山積している。アクセシビリティに関する問題解決の場に、障害のある当事者も参加できるようにするべきだと森田さんは訴える。現在の「バリアフリー建築」の多くは介助者目線や介助者ありきで作られたもので、必ずしも当事者のニーズを満たしているとは限らないのだ。
何よりも、彼女は「障害者」という言葉が自分と周囲の人との間に壁を作らない世界を望んでいる。「「障害者」という言葉を受けて、「何か失礼なことを言ってしまわないか」「どう話したらいいかわからない」など、過剰に気を遣われたり、また距離をおかれてしまったり。人を障害者・健常者の二つに分けることのない世の中が実現するよう、願っています」と、切に語る。