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ダイバーシティ&インクルージョンを目指してTrue Colors Festivalが挑戦し続けること:True Colors Festival エグゼクティブ・プロデューサー | オードリー・ペレラ

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2022年2月10日

2016年からシンガポールで障害のあるアーティストたちの芸術祭「True Colours Festival Singapore 2018」を指揮し、現在はTrue Colors Festivalのエグゼクティブ・プロデューサーを務めているオードリー。”True Colors”に込められたメッセージを振り返り、ダイバーシティ&インクルージョンの重要性が語られることが増えた世の中で、フェスティバルがどのような方法で、どういった役割を果たしていくのか、お話を伺いました。

Q: 芸術祭を「True Colors Festival(トゥルーカラーズフェスティバル、以下TCF)」と名付けたのは、どのような思いからですか?

2016年に初めてTCFの企画をフェスティバル実行委員会に対して発表しました。その時に、キャッチーかつ、人によって多様な捉え方ができるタイトルが不可欠だと思い、いくつか候補を考えました。そのうちの1つが、シンディ・ローパーのヒット曲に因んだ「トゥルーカラーズ」でした。その後たまたま世界で活躍する2人のパフォーマーがそれぞれの語りの中で「トゥルーカラーズ」という言葉を使っているのを見つけたんです。2人はSNSの普及について、一見色々な人が受け入れられているように見えても、実際は誰が人気で、望まれているのかがSNSの世界では規定されているように感じる。そして、そこにそぐわない自分は受け入れられるか分からない。その世界に踏み込むために自分たちの「トゥルーカラーズ」を隠さなければいけない、と言っていました。二人が「トゥルーカラーズ」という言葉を使っていることに特別な意味を感じ、これだと思いました。
私にとっての「トゥルーカラーズ」とは、「その人らしさ」を意味しています。自分らしさというのは多くの場合、批判されたり、嘲られたり、拒絶されたりすることを恐れて隠しがちなことだと思います。誰かが怒ったり、攻撃的になったりしたときに、「彼の本性(トゥルーカラーズ)が現れた」というネガティブな意味で使われることも多いのですが、そういった言葉をあえて私たちはポジティブに使いたいと思いました。誰もがその人らしく、才能に誇りを持ってほしいと思います。従ってTCFでは、観客の側にもオープンマインドで寛容な、他の人の美しさや良さを見つけられるような像をイメージしています。
「トゥルー」や「カラーズ」という言葉には、非常に多くの意味や層、解釈の仕方があります。真実から真実でないことまでの層の中には色々なものが含まれていますし、人間の目が感知できる色のシェードは何百万とあると言われますが、そのすべてに名前がついているわけではありません。そんな風に科学的に裏付けされたデータもプログラムやクリエイティブな素材を生み出すときに非常に意味のあることだと思います。

Q: 以前インタビューで、「私たちはみんな違うけれど、同じパフォーマンスを見て感動や共感し、それらを共有することでその違いを混ぜ合わせることができる」とおっしゃっていました。パフォーミングアーツの可能性をどのようにお考えですか?

私はパフォーミングアーツこそが、人と人との間の障壁を取り除き、物事の捉え方を変える力として最も効果的だと考えています。というのも、パフォーミングアーツでは、私たちは同じ空間に居合わせた様々な人たちとともに、同じシーンで笑ったり、泣いたりと、人類共通の感情を確かめ合うことになり、その体験は観るものに連帯感や、絆を生み出します。
例を2つ紹介します。1つは、ILL-Abilities(イルアビリティーズ)というブレイクダンス・クルーです。7カ国から集まった国籍の違う7人のメンバーによって構成されており、それぞれ異なる障害がありますが、人々にインスピレーションを与えたい、優れたものを見せたいという共通の思いでグループとして成り立っています。これを考えると、彼らの間にある背景の違いは表層的でしかなく、それはクルーとしてのパフォーマンスには全く関係ないことに気付かされます。これは、パフォーミングアーツがダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包括)というコンセプトそのものを体現するものになりうることを示す一例です。
2つ目の例として、True Colors FASHIONで制作した河合宏樹監督によるドキュメンタリー映像「対話する衣服」と落合陽一監修の「身体の多様性を未来に放つダイバーシティ・ファッションショー」には、膨大な数の人々が関わっています。このように、体の形も状況も条件も異なるさまざまな身体を持つ人たち。例えば介助が必要だとしても一人ひとりによって特徴が違うので、必要なサポートも違います。そういった様々な人たちに加え、デザイナー、専門家、ファッションブランドなど、特異なビジョンを持った個性的な人々を巻き込んで共通のビジョンを持ち、創造物を生み出すことができる可能性は、他にはないでしょう。

満員の観客で盛り上がる会場

「True Colours Festival Singapore 2018」の公演風景 撮影:冨田了平

Q: パフォーミングアーツを通して、感動の瞬間を共有することは大切ですが、その非日常で味わった一過性の感動を、どう日常に繋げていくかというのは、非常に重要な課題だと思います。場の共有から生まれたものを次のステップにつなげる方法があれば教えてください。

観客に永続的な影響を与える方法を持たなければいけないと私も感じています。
イベントで感じたことを何らかのアクションやコミットメントに繋げたり、その日の出来事が会話や映像などといった形で、また彼らの大切な人たちと共有されていく方法があるはずです。観客たちが体験したことを次につなげ、波及効果を実現するためには、企画の初期段階からこういった展開を考慮したデザインを創作し、戦略的に計画していく必要があります。
というのも、自分自身や家族、身内に障害者がいない限り、ほとんどの人は、日常的にダイバーシティ&インクルージョンに思いを馳せることはないからです。それだけでなく、世界的なパンデミックがある状況で、多くの人が生きることで精一杯となっている中、多様性について考えることは難しいでしょう。ただ、私は原則として人間の心は公平を大切にし、受け入れ、尊重することを信じているので、それをこの状況下でどう持続させていくかを考えることが私たちの課題です。
特に、オンラインでの実施が増えた今、物理的に集まれないとなるとそのための戦略を考える必要があり、今私たちが直面しているチャレンジだと感じます。誰もが予測していなかった状況なので、まだ正解の形は誰にも分かりませんが、イベントを実施しながらそれに関わる全員で学び合っていけたらいいなと思っています。

Q: フェスティバルのスローガンである「One World, One Family」について教えて下さい。

TCFのウェブサイトにもありますが、今年の試みのひとつに、TCFのナラティブ(TCFのプロジェクトに一貫してある物語)を提示したことがあります。その中で日本財団の創設者が提唱した「One World, One Family(ワンワールドワンファミリー)」という言葉が使われています。私たちは地球上にある一つの種であり、同じルーツを持つ存在です。そういった意味で、この言葉はいろいろな人がその人なりに理解する、アクセスすることができると思います。イベントらしい華やかさやわくわくを差し引いたときに観客の心に残したいのは、すべての人を好きになる必要はありませんが、私たちはみんな同じ原点を共有しているという感覚です。

Q: TCFで実施しているアクセシビリティの取り組みについて、とても幅広く工夫されていると感じました。お話をお聞かせください。

アクセシビリティは3つのカテゴリーに分けて考えられることが多いのですが、物理的なアクセシビリティ、精神的なアクセシビリティのほかに、感覚的なアクセシビリティというものがあります。これは最近TCFでも力を入れている分野の一つで、12月に開催した映画祭では、手話通訳、音声ガイド、盲ろう者用のスクリプトなどを用意しました。
アクセシビリティにも広い範囲があり、やろうと思えばやり尽くせないほどあるのですが、最終的には自分たちの条件の中でどこまでできるのかを判断する必要があります。このような取り組みはすべて現在進行形であり、常に更新されていくことがアクセシビリティについて考えていく上では大切だと思います。

Q: オンラインイベントにシフトした今、イベントを経験した観客が何を感じ、何を持ち帰ったのか、その声を聞くことはとても難しいと思います。そのような情報をキャッチするための工夫や方法はありますか?

オンラインでイベントを開催した際は最低限の数字の追跡は行います。SNSでのエンゲージメント数、「いいね!」の数、視聴率、コメントなどを参考にします。また、今月から試験的に始めたプログラムでは、TCFで制作したミュージックビデオ「You Gotta Be(ユーガッタビー)」を、インド全国の幼稚園から高校までのさまざまなレベルの先生や校長先生42名を集めて、上映しました。これを受けて障害や能力の違いにまつわる偏見についてのディスカッションが行われました。プログラムに参加した先生から、これをこのまま終わらせるのではなく、自分たちの学校の授業の一環として使いたいという提案がありました。当然、同じ学区内には色々な能力を持った生徒がいて、捉え方も様々であろう子供たちに、教室で対話や議論をする機会を与えたいということで、学校で使ってもらうことになりました。このように、ただYouTubeの動画を見たり友達とリンクをシェアするというだけでなく、それとは違った方法でより深い影響を与えることができます。つまり、Youtubeに上がっている単なるミュージックビデオではなく、人を巻き込んで使い方や展開を考えることで、新しい価値をつけたり、影響力を深めることが可能であり、これは、持続可能にしていくための方法としての一例であると思います。

Q: 2018年と現在(2021年)の True Colorsを比べたときに、社会の雰囲気の違いについてどう感じますか?

2018年のときは、あくまでも障害の有無ではなく、ひとりひとりの才能に焦点を当てていましたが、慈善事業の対象であるという目で見られていた印象が強くありました。
現在に目を向けて何が変わっているかお話しすると、3つの違いがあるように思います。1つ目は、これまで以上にメインストリームの映画やテレビ番組で、障害のある人の生活や課題、自分の声を見つけたいと思っている彼らの思いなどが取り上げられることが多くなったと感じます。テレビや映画に出てくるものは、社会で起きていることを反映している、つまり、プロデューサー、ディレクター、コンテンツ制作者などの意思決定者のレベルで意識の変化が起きているということになります。
2つ目の変化は、オンラインスペースで自分の声を持って当事者自身が発信する、セルフアドボカシー(自己擁護者)が増えてきているということです。
3つ目の変化は、特定の言葉が使われなくなったことです。handicapped(ハンディキャップド)、disabled(ディスエイブルド)など、これまでは障害にまず焦点を当てて、そのあとに人が付いてくるように捉えられる表現がありましたが、今はまず人に焦点を当てています。その人のもつ様々な要素の中に障害もある、という考え方になってきています。このように、社会全体で言葉が変化してきており、私たちはより包括的な話し方をするようになってきています。
2018年に比べると、障害にまつわる考え方が社会の中で大きく変わってきていると感じています。また、TCFがこのような変化の一端を担っていると信じたいと思います。私たちはまだ世界的に知られるような大規模なフェスティバルではありませんが、変化のきっかけを少しでも生み出すことができたらと思います。

Q: 今後のビジョンを教えてください

TCFが時間をかけて国際的に認識される名前に育っていってほしいと思っています。True Colors Festivalと聞いたらOne World, One Familyを思い出して、その人の中で何か感じるようなそんな存在になってほしいですね。

オンラインでインタビューは行われた

上段の真ん中がオードリー

メイン画像 撮影:冨田了平、インタビュアー:安藤寛志/平原礼奈/森下ひろき、通訳:樅山智子 

True Colors Festival

歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツ。

障害や性、世代、言語、国籍など、個性豊かなアーティストがまぜこぜになると何が起こるのか。

そのどきどきをアーティストも観客もいっしょになって楽しむのが、True Colors Festival(トゥルー・カラーズ・フェスティバル)です。

居心地の良い社会にむけて、まずは楽しむことから始めませんか。

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