True Color FestivalのSNSアカウントで公開を始めた「#道ばたのダイバーシティ」。True Colors DANCEなどにも登場したダンサーの西村大樹さんには「軟骨無形成症」にまつわるエピソードを教えていただきました。「#道ばたのダイバーシティ」では伝えきれなかった西村さんのこれまでの道のりや、現在の活動についてご紹介します。
True Colors DANCEで舞台に立つ西村さん(左)、2019/09/10 撮影:冨田了平
Q: 「軟骨無形成症」について知ったのは、いつでしたか?
西村: 自分の障害を意識したのは、小学校に入学したときかな。それまでは、自分とみんなとの違いについて、あまり考えたことがなかったんですよね。ほかの子も体が小さい時期だし。けれど、小学校からは身体測定がありますよね。小学一年生の時は、身長が99cmで、次の年は100cm。周りの子たちはどんどん背が伸びるのに、僕が伸びたのは1cmでした。周りとの違いからいじめられて、キツかったですね。集団の中にいることの難しさに直面した初めてのタイミングでした。小学校5年生のとき、自分でこの障害について調べて、二万人に一人の割合で発症し、全国に6,000人いることを知りました。
Q: 集団行動や学校生活で不便を感じる場面はありましたか?
西村: 学校の設備も、自分には合わないものが多くて。物理的に障害になるものは学校に掛け合って、エレベーターや、位置を低くした蛇口を新設してもらいました。あとは、先生に依頼されて、軟骨無形成症について全校生徒の前で話すという機会もありましたね。そうやって、それまで学校になかったものを作ったり、働きかけることで変化したことがあったのは良かったと思います。ただ、授業でいうと体育がずっと好きだった反面、小・中・高校を通して大変な場面も多々ありました。
幼少期の西村さん
Q: 具体的にどんなことに大変さを感じたり、疑問を持っていましたか?
西村: 僕自身は身体を動かすのが好きで、筋肉も付きやすい体質なんです。けれど、ドクターストップがかかっているスポーツも多い(注1)。だから、授業でも見学が多くなるんですね。けれど、その事情が成績をつける時には配慮されなかったんです。怠けているわけではないのに、運動能力だけが評価の基準になって「見学なら成績はつきません」と画一的に決められていたことに、ずっと疑問を持っていて。だったらまず、自分が体育の教師になろうと考え、大学へ進学しました。軟骨無形成症で体育の教員免許を持っている人って、日本にいなくて。お医者さんにも、学校の先生にも止められたけど、それでもやりたかったんです。
Q: 西村さんの考える、理想的な体育の授業ってどんなものでしょう?
西村: 生徒ごとに向き合い方を変えた授業内容であれば、みんなが楽しめると思うんです。例えば、バスケの授業だったら、見学している生徒にプレーヤーの動きを記録してもらって、プレーヤーにフィードバックをしてもらう。そうしたら、見学者も楽しいし、プレイしてる側と一緒になって改善点を見つけられますよね。バレーボールの場合は、各チームの習熟度や意見に合わせて、ネットの高さを調整してみたり。体育って、運動能力を高めること、各種目を完璧にこなすことだけが目的じゃない。だから、生徒たち自身で楽しめる形態を考えて、それで成績がついたらいいなって。ただ結局、身体の事を相談すると教職採用試験の受験すら出来ませんでした。
現在はダンサーとして活動しながら、ダンサーとして培った表現力を使った子どもの発達支援の仕事をしています。身体表現や活動を通して、子どもたちの身体や感覚を刺激することで、脳の発達を促したり、活動の幅を広げられるんですよ。
2019年、小学校でのダンス・ワークショップを実施
Q: 西村さんの大切にしていることと、これからやってみたいことを教えてください
西村: 職場で同僚とコミュニケーションすることも、舞台上でダンスをすることも、どちらも自分から発すること。そして、その発信に周囲が反応して、場がつくられていきます。僕のことも、この障害のことも、伝えないと伝わらない。だからこそ、自ら発信し続け、伝えていくことが大切だと考えています。あとは、軟骨無形成症患者の方々の為の住居や施設の環境づくりにイチから関わってみたいです。僕の今の夢は、軟骨無形成症患者の方々も、他の障害のある人たちも誰しもが障害や環境に悩まずバリアフリーが整っていて家に帰って来るような気持ちで好きなダンスと向き合えるダンススタジオを建てる事です。
(注1)体育実技の中では、柔道、器械体操、陸上競技がドクターストップを受けていました。陸上競技は下半身への負担が大きく、柔道は技をかけられた時に足腰が圧迫されることで骨や神経へ大きな負担がかかるためでした。器械体操も同様ですが、ハンドスプリング、ロンダート、側転などの腰を地面に打たない技には参加していました。また、大学では向き合い方を考え、柔道は初段を取り、それぞれの授業でも自分なら教える立場として何が出来るか教授と一緒に考える事で、単位を取得し、教員免許取得に繋がりました。(西村さん)