voice
障害の有無、国籍、性、あらゆる境界を取っ払って、ストリート・ダンスの熱気がお客さんに伝わっていたと思います。通りがかりの人も含めて、このような場でダンスと社会の接点をつくれたことはすごく意義のあることでした。
私自身も20年以上前からダンスに関わっていますが、ダンスの社会的な地位はまだまだ低い。それを改善させたいという思いで「ODORIBA」を始めました。ブレイクダンスを含むヒップホップカルチャーは1980年代半ば頃に日本に上陸して、脈々と続いてきました。ただ、どうしてもクローズドなコミュニティになりがち。ストリートダンスを通じて社会的なメッセージを表現することは、ダンスの魅力をより広く、深く伝えることにもつながる。今回の「True Colors DANCE」に協力させて頂いたのはそんな思いもありました。ダンスはさまざまな「違い」を超えて楽しめるコミュニケーション・ツールですから。
今回工夫したことは、MCのKITEさんやゲスト解説のBboy Katsu1さんのように、ダンスのカルチャーを親しみやすく翻訳できるような方をキャスティングしたことでした。ストリートダンスのシーンで認められている人たちと、「SOCIAL WORKEEERZ」や「LJ BREAKERS」などダンスを通じて社会的なメッセージを発信し続けているチームが共演したことで、ダンスシーンとソーシャルメッセージをうまく結合させることができたと感じています。UNOさんたちによる、聴こえない方も参加できるダンスワークショップも、ゲストと観客の垣根をなくす上で大切なプログラムでした。手話通訳者や字幕といった情報保障やゆずりあいエリアの設置も、通常のダンスイベントではまだ少ない。良い工夫だったと思います。
“ダンス×ソーシャル”の文脈で言えば、赤ちゃんを抱っこしながらダンスをする「Babywearing Dance(ベイビーウェアリング・ダンス)」を一昨年から始めました。私にも子どもが2人いますが、赤ちゃんを連れたお母さんに対して世間の視線が冷たいなと感じていて。「電車の中でいやがらせをされた」と聞いたこともあって、ベビーカーで電車に乗るのが怖かったんです。赤ちゃんがいることで、その場がほっこりする、幸せだなと感じる。そんな雰囲気をお説教臭くなく伝えるにはどうしたらいいかなと思って、始めた取り組みです。
いわゆる「マイノリティ」の人々がダンスを楽しみ、追求できる環境にはまだ課題があると思っています。その為には当事者のモチベーションと社会の変化が両輪になることが必要だと思う。「イルアビリティーズ」の言葉を借りれば「No Excuses, No Limits」。このようなイベントを単発ではなく継続的に実施できるようにトライしていきたいですね。