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Meet The Family(TCFファミリーの素顔):アレクサンドリア・ウェイルズ

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2022年2月1日

【Meet The Family(TCFファミリーの素顔)】True Colors Festival では『コーダ あいのうた』〈日本語バリアフリー字幕版〉の制作協力を行ないました。本作でASL(アメリカ手話)監督を務めた聴覚に障害があり、俳優でダンサー、教育者でもあるアレクサンドリア・ウェイルズさんに東京大学UNiTeの学生が話を伺いました。

Q: 映画の中でルビーと家族の多様な側面を描くにあたって、心がけていたことはありますか?

『コーダ』の監督兼脚本家であるシアン・ヘダーさんが目指したのは、この興味深い人たちが集まった家族を描くことでした。また、ルビーの葛藤を描くこともテーマでした。家に留まってこれからも家族を支えるのか、それとも大学に進学するのか。そういった経験は、映画を観る誰もが持っている普遍的な問題ですよね。私自身も、アーティストであり、一人の人間であり、ろう者です。ろう者だけ、障害だけにフォーカスするのではなく、それは一人の人間の一部でしかない。誰しもに共通する普遍的な部分を描きながら、一方で個別の違いや経験にもフォーカスすることで、それぞれの側面が、その役柄全体を作ることを目指しました。

家族4人それぞれを理解することは、家族という集合体の理解につながります。母を演じたマーリー・マトリンさん、父役のトロイさん、兄役のダニエルさんは、自分達の経験を役作りにいかしていました。ルビーを演じたエミリアさんも同じで、自分の役割を理解しながら、家族の一員になっていった。それが映画の成功に繋がったと思います。観客が持っている経験にも、通じる部分がありました。皆さんだって、親が友だちの前で恥ずかしいことを言ったりやったりした経験ってありますよね。生活の中でにあり得るような経験です。また人生には決断を迫られることもあります。大学に行くか行かないか。その決断がこれから先、どんな風に人生に関わっていくのか。家族としてそれをどうやって解決していくか。そうしたことが、部分だけにフォーカスするのではなく、役柄や家族という全体を見るような作品に仕上げてくれていると思います。

Q: 多様性の大切さを伝える上で、映画などの文化・芸術にどんな希望を感じていますか

私たちがテレビや劇場などで見ているものは、制作過程の結果です。大切なのは、多様性をシェアする、違いを共有し合うことだと思います。つまり多様性のあるストーリーを作るためには、実際に障害があるとか、聞こえない脚本家やディレクターがその過程に関わっていることが、とても重要です。そのプロセスの中で、多様な人たちが集まって話し合い想像しながら、一つのものを作り上げていくことです。

インタビューの様子

画面左から、東京大学UNiTe(佐々俊之さん、菅田利佳さん、飯山智史さん)とアレクサンドリア・ウェイルズさん

Q: 若者に期待することや、メッセージなどいただけますか。

とにかく、続けることですね。自分のゴールを目指すことは、時に簡単かも知れませんし、時に障害・壁があってなかなか辿り着くことができないかもしれない。あなたを理解しない人もでてきます。でも、そういう時には自分の心の声を聞いてほしいです。自分が自分の一番の理解者ですから。アートでも演劇でもなんでも良いですが、自分の中に湧き上がってくる止められない思い、それをやっていると満足していられるようなものを見つけて、それをやり続ける。
もちろん努力も必要ですし、優先順位を考えることも必要です。そうやってどうすれば成功できるか、どうやったらそれをよりよいものにできるか考える。
また、自分をサポートしてくれる仲間を見つけることも大切です。仲間同士でアイディアをだしあって、思いをぶつけあって、それをもう一度自分の中に入れ込んで一つの形を作っていくことだと思います。

『コーダ あいのうた』の主人公家族

『コーダ あいのうた』
アメリカ|2021年|112分|PG-12
配給:ギャガ GAGA★© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

Q: True Colors Festivalは多様性とインクルージョンを称える芸術祭として、「One World One Family(世界は一つの家族)」というキーワードでPRを行なっています。ウェイルズさんの考える「ワン・ワールド・ワン・ファミリー」について教えてください

「One World One Family」には強い意味があると思います。いろいろな手話があるように、世界にはさまざまな違いがありますし、一つのものに対する見方も人それぞれ違うわけです。それをみんなで共有して意見を交わし、その中で一つのものを作り上げていく。そういった人間的な営みは、世界のいろんなところで行われています。

誰しもさまざまな背景や経済状況がありますが、人生の中で同じような経験もしているわけです。夢や希望、胸の痛むようなことなど、お互い学び、大切にし合いながら一つのものを作り上げている状態が、一つの大きな世界だとわたしは感じています。

アレクサンドリア・ウェイルズ(Alexandria Wailes)
聴覚に障害のある俳優でダンサー、教育者。
映画『コーダ あいのうた』にはDASLとして参加。
*DASL=ASLマスターとも呼ばれ、演劇の経験が豊富で、ろう文化や歴史を理解している人物のこと。
映画作品の時代、地域、出演者の性別に応じて、どの手話が一番ふさわしいのかを決定したり、台詞にこめた意図や想いを手話で伝えるための翻訳・指導、漁業を家業とする一家の物語であるため、魚の種類や地域の訛りについてのASLのリサーチ等を行った。

TRUE COLORS FILM FESTIVAL 2021:イベント『コーダ あいのうた』特別先行試写とトーク
Alexandria Wailes(アレクサンドリア・ウェイルズ)オフィシャルサイト:英語
映画『コーダ あいのうた』

True Colors Festival

歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツ。

障害や性、世代、言語、国籍など、個性豊かなアーティストがまぜこぜになると何が起こるのか。

そのどきどきをアーティストも観客もいっしょになって楽しむのが、True Colors Festival(トゥルー・カラーズ・フェスティバル)です。

居心地の良い社会にむけて、まずは楽しむことから始めませんか。

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