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True Colors Festivalをともに作る仲間を紹介する「Meet The Family(TCFファミリーの素顔)」シリーズ。2021年5月末に配信されるTrue Colors FASHIONから、義足エンジニアの遠藤謙さんに、開発にかける思い、目指す未来についてお聞きしました。
True Colors FASHION 身体の多様性を未来に放つダイバーシティ・ファッションショー:2021年5月30日から公開
Q: True Colors FASHIONでは、義足でも楽しく公園や学校で走り回れる日常を目指したプロジェクト「Blade for All」に参加する子どもたちが、モデルを務めてくれました。「Blade for All」を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?
一番最初は、Xiborg(サイボーグ)の所属選手である佐藤圭太選手が健常者向けのランニングスクールをする中で、「たくさんの健常者に向けて教えるのも良いけど、たった一人でも義足で走りたいと思っている子がいれば、その子が走れるようにしてあげたい」と話したのがきっかけです。2016年のことでした。その後豊洲のBrilliaランニングスタジアムで、来れば誰でも競技用義足をつけて走れる「ギソクの図書館」を始めました。とはいえそれでも走ることが、「非日常」的なものになっていますよね。日常的に走るためには自分で持って、自分で交換して、自分で走れることが必要。Blade for Allでは、走りたいと思う義足ユーザーが日常的に楽しく走ることができるようになることを目指しています。
Blade for Allに義足を付け替える杉本大地さん(撮影:冨田了平)
Q: Blade for Allでは、Xiborgで開発されたブレードが使用されていますね。どんな特徴があるのでしょうか?
パラリンピックで作っているブレードは25〜60万円くらい。アスリートにとっては高価なものではありませんが、アスリートじゃない人にとっては買うのに抵抗感がある価格だと思います。だからBlade for Allでは、材料や成型プロセスを見直して、安く作れるように工夫しています。またカーボンだと基本的に素材の「黒」が主流ですが、Blade for Allは青・黄色・マゼンダ・緑・黒と選べるようになっています。靴を選ぶように好きな色を選べるといいですよね。
Q: そもそもテクノロジーによって障害者の活躍の場を広げることに、これほど情熱を注ぐようになったのはなぜですか?
高校時代の友達が骨肉腫になって、足を切断したことが最初のきっかけでした。それで義足に興味を持ち、義足の研究をするために留学しました。その後留学先でパラリンピアンのオスカーピストリウス選手に会う機会があったんです。彼は両足にブレードをつけていて、後に両脚が義足の陸上競技選手として初めて五輪出場を果たしました。障害者だけど健常者と変わらない、それ以上のスピードを記録できる。これって下剋上だと思って。テクノロジーの力によって、健常者と障害者の概念を覆せることにワクワクし、競技用義足の開発をしたいと思うようになりました。
Q: 「True Colors CIRCUS」Blade for Allでは、どんな未来を目指していますか?
子どもに限らず、いずれ誰もが走りたいと思ったときに、足がないことが走ることの障害になっていない状態を作りたいと思っています。義足で走っている子どもって、きっと将来はパラリンピアンになりたいんだろうなと思われがちです。でも義足で走ることをそんな風に限られた人の特別なことじゃなくて、もっと普通のことにしたい。ブレードが普段着のようになって、義足で走ることが日常的になる風景を目指しています。
Q: これから遠藤さんが未来に向けてチャレンジしたいこと、可能性を感じていることはなんですか?
僕は人間の身体に興味があります。義足や義手など肢体がどういう状況にあるかということが、日常生活を送る上での不便になっていることが今は多いですよね。テクノロジーをつかて、そういった不便をなくすようなものを作っていきたいです。
Blade for ALLを付けてランウェイを歩く友岡海乃さん(撮影:冨田了平)
遠藤謙
ソニーコンピュータサイエンス研究所リサーチャー。ロボット技術を用いた身体能力の拡張に関する研究に携わる。2014年には株式会社Xiborgを創業、代表取締役に就任。Xiborgではブレードの開発をするエンジニアでもある。株式会社xiborgは、100m競技オリンピックチャンピオンを打ち負かすことを目標に、義足アスリートの義足(ブレード)開発やサポートを行う。さらにはその知見を生かし誰もがスポーツを手軽にできる社会のために安価なブレード開発やその普及活動も行っている。