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True Colors Festivalをともに作る仲間を紹介する「Meet The Family(TCFファミリーの素顔)」シリーズ。True Colors CIRCUS:SLOW CIRCUS PROJECT「T∞KY∞(トーキョー)~虫のいい話~」から、今回はアクセスコーディネーターの廣岡香織さんと金田由美さんに、アクセスコーディネーターの役割や楽しみについて伺いました。
True Colors CIRCUS:2021年4月25日、26日
*政府より緊急事態宣言が発令されたことに伴い本公演は中止となりました。
Q: 「True Colors CIRCUS」でのアクセシビリティ・コーディネーターとはどんな役割なのでしょうか?日々の仕事の内容について教えてください。
(廣岡)参加する人によってその時々で必要となることは変わるので、安全にその人なりのチャレンジができる環境をつくるために、想像のできる限りを尽くすことです。
参加前の段階では、参加する人の特性を事前に確認して配慮事項の予測を立て、物や環境、条件等を準備したり、どうしても必要な場合は参加者自身に直接確認したりもします。活動日には、参加者のコンディションを確認することから始まり、気になる症状や留意が必要と感じる時には、アカンパニストや他のスタッフに情報を共有して全員でその環境を作っていきます。
その時々の参加者の状態と周囲の状況や条件から、安全な場を作るために必要なことをその都度汲み上げ判断し、必要な情報を必要な人と共有します。時に参加者の家族とも話し、それぞれの参加者が参加する意義がどこにあるのか、それを一つでも実現するために必要なことや環境は何なのかを常に考え感じながら関わりを続けています。
高いところに登って飛び降りようとしている出演者を支えようと、下にいるパフォーマーたちが手を伸ばして待ち構えている様子
Q: このプロジェクトに関わる中で印象的な経験をお聞かせください。
(廣岡)一番うれしいのは、参加者がプロジェクトの中で成長をしている部分に気付いた時です。一人一人と時間をかけて関わり続けることが多いため、変化や成長を感じられるチャンスがたくさんあります。その小さな瞬間の全てが、私にとっては印象的です。
Q: 金田さんは静岡で行われたスローレーベルのサーカスWSに参加したのがきっかけで、アクセスコーディネーターになられたそうですね。金田さんからみて、この仕事の意義はなんでしょうか?
(金田)キャストがライトを浴びて自信を持って笑顔でパフォーマンスしている姿を観るのが自分にとって一番うれしい時です。それをイメージしながら全集中で稽古に取り組んでいます。
Q: 多様な能力、障害のあるパフォーマーと仕事をする上で、具体的にどのような配慮をしていますか?
(金田)それぞれの身体、メンタル、バックグラウンドの情報収集に努めるのはもちろん、出来るだけ全員と会話して信頼関係を作るようにしています。その日その日の体調の把握もありますし、皆が最高のパフォーマンスができるように、得意な事、苦手な事、工夫すれば出来ることは何かを丁寧に確認して、よかったところは積極的に伝えてるようにしています。多様な能力、障害がその人の個性だと思います。何かあってもわたしはわたし。その人、個人を尊重して接していくように心がけています。
Q: 障害のあるパフォーマーと観客の両方の視点から、パフォーミング・アーツにおけるアクセシビリティについて、改善しなければならない点は何でしょうか?
(廣岡)それぞれの情報保証の設置やバリアフリー等の物理的なアクセシビリティの確保ということは大前提の上で、今の既存の在り方だけではなく、アートの力を借りることによってさまざまなコミュニケーションの在り方の可能性を模索していくことが、今後の課題ではないかと思います。それは提供する側だけの模索ではなく、受け手側もアートを楽しむために自分のチャンネルを増やしていく模索が必要だと思います。
こうでなければならない、ああでなければおかしいという観念に囚われない、様々な方法で楽しむ心を鍛えるためのコミュニケーションの模索ができる開かれた環境づくりが、パフォーミングアーツをより豊かなものにしていってくれると思っています。
アカンパニストと出演者が身を寄せながら出番を待っている
Q: True Colors Festivalのメッセージは「One World One Family」ですが、これはあなたにとってどのような意味がありますか?
(廣岡)私の中では、この“one”は「ひとつになる」というニュアンスは持っていなくて、「ひとつが、みんな違う存在で成り立っている」という意味です。
(金田)みんなで繋がろう!大丈夫。一人じゃないよ。自分を大切に。
廣岡香織
1996年に看護師免許取得後、早稲田大学演劇研究会にて舞台制作全般を学ぶ。結婚後にアフリカでの生活を経験。出産・育児を経て、2015年よりSLOW LABELのアクセスコーディネーターとして「障害のある人が舞台に立つための環境整備」に取り組む。リオ・パラリンピック・旗引継ぎ式・チーフ・アクセスコーディネーター。
金田由美
静岡市在住。看護師。母親の介護を経験し「障害があっても自分らしく楽しく生きる」ことについて考えるようになる。静岡コミュニティダンスプロジェクトの舞台美術ボランティアに参加。静岡市こどもミュージカルにて舞台制作を学ぶ。2017年、静岡で開催されたSLOW LABELのアクセスコーディネーター研修に参加。2019年からがんサバイバー。現在はリハビリデイサービスで明るく元気に看護師として勤務。