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Meet The Family(TCFファミリーの素顔):益山貴司

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2021年9月14日

【Meet The Family(TCFファミリーの素顔)】True Colors CIRCUSでは、日本語音声ガイド、日本語・英語字幕の情報保障など、アクセシビリティを高める取り組みにも力を入れました。音声ガイドの脚本を手がけた益山貴司さんに、ガイドの役割やソーシャルサーカスへの参加を通して感じたことなどについて伺いました。

True Colors CIRCUS: SLOW CIRCUS PROJECT「T∞KY∞(トーキョー)~虫のいい話~」

Q: 文芸・音声ガイド」として参加されたTrue Colors CIRCUSでは、作品が生まれるどの段階から、どのような役割を担われたのでしょうか?

プロデューサーの栗栖(良依)さんと演出の金井(ケイスケ)さんと共に、作品のコンセプトの立ち上げから話し合いました。お二人の想い、特に世界で行われているソーシャルサーカスについてのお話を伺いながら、ソーシャルサーカスがまだそれほど浸透していない日本でどのようにアプローチするのかを考えました。私の役割は「器としての物語」を作ることだったので、色々な提案をさせていただきました。宇宙を舞台にしたり、子供たちが船で旅に出たり…。いろんなシュチュエーションを試しながら考えをすり合わせて行きました。コロナの中断を挟みつつ、最終的には、金井さんが現場で作り上げたものに、物語として音声ガイドをつけていった形です。

Q: 今回ソーシャルサーカスの作品に参加しようと思ったきっかけはなんですか?演劇作品の脚本との役割の違いや、意識したことなどがあれば、聞かせていただけますか?

以前、SICF(スパイラル・インディペンデント・クリエイターズ・フェスティバル)というコンペティションに参加した時の審査員の一人が栗栖さんでした。そこで知り合い、このプロジェクトに声をかけていただきました。私自身は、「劇団子供鉅人」を主宰していて、いわゆるあてがきで脚本を書くことが多いのですが、今回もそれに近いことを感じました。つまり、役者やパフォーマーの持つ個性に従ってキャラクターを作り、物語を導き出すやり方です。演出の金井さんも現場でどんどんアイデアを出して、日々、内容を変化、更新されていました。私も自分の現場では、セリフを変えたり、役者の出したアイデアでシーンを変えていくことにためらいがないので、例え、決められていた脚本や設定が変わったとしても、「こっちの方が面白いから」と流れが変わっていく作り方に共感できました。なので、今回の脚本の役割は「遊び場」を提供したことかな、と感じています。皆さんには目一杯遊んでいただけて幸せでした。

益山さんの脚本をもとに、音声ガイドをライブ配信する様子(撮影:冨田了平)

益山さんの脚本をもとに、音声ガイドをライブ配信する様子(撮影:冨田了平)

Q: 音声ガイドについて聞かせてください。多才な個性の出演者を表現するのに工夫した点、苦労したところなどを教えてください。

私にとって音声ガイドを作るのは初めてだったので、どのように書けばいいのか悩みました。参考のために演劇の音声ガイドを聞きましたが、当然ながら、半分は役者のしゃべる台詞です。サーカスの場合、基本的にセリフはありませんし、抽象的です。なので、どちらかというと、情景描写に力点が置かれるのかな、と漠然と考えていました。実際に書き出し始めると、聞き手の想像力に訴えるような余白を残しつつも、目の前の状況を具体的に伝えることのバランスをとるのが難しかったです。また、パフォーマーたちの個性豊かな動きを、物語に沿って、虫の動きとして表現するのが楽しく、聞き手の人たちが頭の中で様々な虫の姿体を想像できてもらえたかなと思っています。最終的には、情報保障のスタッフの方の力もお借りしながら、音声ガイドでしか味わえない「物語」を作ることができたと感じています。

Q: 実際のサーカスをご覧になって、特に印象に残ったシーンがあれば教えてください。

あらすじや脚本は「言葉」でしかないので、パフォーマーが肉体でもって、その言葉を超えたものを生み出していくのは、演劇でもサーカスでも、常に驚かされるものがあります。今回、私が特に心を動かされたのは、「ただそこにいる」ということの素晴らしさです。
サーカスは、当然、見せ物としての楽しさ、面白さを観客に提供しなければなりません。ですが、今回のソーシャルサーカスでは、障害のある人々が「ただそこにいる」だけという瞬間が何回かあって、それは、見せ物としての芸を超越するような、すごい質量をともなって私に迫りました。もはや、生きているだけでサーカスなのだな、と思わされました。

音声ガイドのナレーターの手元にある台本(撮影:冨田了平)

音声ガイドのナレーターの手元にある台本(撮影:冨田了平)

Q: 本作品をきっかけに今後の活動にいかしていきたいこと、新たに挑戦していきたいと思うことはありますか。

ただひたすらにサーカスを作りたくなりましたね。
これまでにもセリフを使わない、ノンバーバルな作品を作る機会もありましたが、「物語を見せる」ことに重点を置くのではなく、「芸を見せる」ことにこだわったサーカスは新鮮で楽しいものでした。芝居ももちろん、芸と言われるものの範疇ではあると思うのですが、サーカスのように身体を使った芸というものは、瞬間的に興奮できるところが実に楽しい。芝居は観客の共感を基としますが、サーカスの芸は驚きを基としています。そういったところに醍醐味を見出す「サーカスのような芝居」が作れたら楽しそうだなと思っています。

Q: TTrue Colors Festivalは多様性とインクルージョンを称える芸術祭として、特に海外に向けて「One World One Family(世界は一つの家族)」というキーワードでPRを行なっています。益山さんの考える「ワン・ワールド・ワン・ファミリー」について教えてください。

「しんどいんやったら世界中が家族なんやし、誰でもええから頼って相談したら」と言えたり、思えたりできたらいいですね。

公演の様子

True Colors CIRCUSのゲネプロダクションの様子(公演自体は緊急事態宣言により中止となった)(撮影:冨田了平)

益山貴司
劇作家/ 演出家/ 俳優
劇団子供鉅人 代表。これまで、子供鉅人のほとんど全ての作・演出を行う。お化けと女の子に怯える幼少期を過ごした後、20 世紀の終わり頃に演劇活動を開始する。作風は作品ごとに異なり、静かな会話劇からにぎやかな音楽劇までオールジャンルこなす。一貫しているのは「人間存在の悲しみと可笑しさ」を追求すること。

True Colors CIRCUS: SLOW CIRCUS PROJECT「T∞KY∞(トーキョー)~虫のいい話~」
劇団子供鉅人

True Colors Festival

歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツ。

障害や性、世代、言語、国籍など、個性豊かなアーティストがまぜこぜになると何が起こるのか。

そのどきどきをアーティストも観客もいっしょになって楽しむのが、True Colors Festival(トゥルー・カラーズ・フェスティバル)です。

居心地の良い社会にむけて、まずは楽しむことから始めませんか。

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