fbpx

voice

Meet The Family(TCFファミリーの素顔):河合宏樹

  • Share on facebook
  • Email
  • Share on twitter
  • Share on what's up
  • Share on LINE
2021年12月1日

【Meet The Family(TCFファミリーの素顔)】多様性にふれるための映画祭「TRUE COLORS FILM FESTIVAL」では、映画監督河合宏樹さんの3作品がオンラインで公開されます。河合さんに、これまでの作品や映像制作に対する思いについてお話を伺いました。

Q: 『うたのはじまり』はろうの写真家・齋藤陽道さんを追ったドキュメンタリー作品です。齋藤さんとは、どんなふうに出会われたんですか?

映画にも出てくるんですが、飴屋法水さんの公演に齋藤さんが参加されていて、それを撮影したのが最初です。そこからSNSでDMするようになって、その後七尾旅人さんのライブの打ち上げで一緒になりました。その時は彼がパートナーの麻奈美さんと手話で話をしている姿が、ダンスのようで美しいなと思ってみていたんですけど、そこから彼がなぜ写真をやっているかっていう質問に対して「誰かと一緒にご飯を食べるのと同じ」と答えていたのを聞いて。彼にとって写真はコミュニケーションの一つであって、人との関係性に愛情を持って接している、人と繋がりたいという気持ちを持ってやっている。自分も同じような気持ちでカメラを持ったりすることがあるんです。それですぐに魅了されました。それからは一緒に飲みに行ったり、旅行に行ったりしていく中で、人間としての器の大きさに惹かれていきました。

Q: 作品では、齋藤さんが嫌いだった「うた」と出会う過程が記録されていますよね。このテーマはどんなふうにして生まれていきましたか?

そもそも障害をテーマに彼を見ていたわけではなく、障害をモチーフに映画を撮りたかったわけでもなく、音楽や歌っていうテーマもなかったんです。基本的に僕にとってもカメラを向けることは相手と一緒にご飯を食べることで、コミュニケーションツールであって。仕事で依頼されて撮る時もあるので全てではないのですが、特に何かを決めてストーリーに向かっていくような撮り方ではなくて、その時間をちゃんと残したい、残していくことで生まれる関係性があるだろうという期待をしてカメラを向けています。

そんな中であるとき齋藤さんから突然連絡をもらって、麻奈美さんの出産の場に駆けつけました。出産のシーンは映画の中にも入っているんですが、その場では麻奈美さんはものすごい歓喜の声を出していて、子供は産声をあげていた。周りもその状況に感動というか、大きな感情の揺れ動きがあった。その時に齋藤さんが僕に次々と質問を投げかけてきたんです。「彼はなんて泣いているの?」「彼の声はどういう色をしているの?」って。「そうだ。この場であっても、彼は聞こえていないんだ」と思ったと同時に、彼の質問は僕にとっては普段全く考えてこなかったことでした。今回の映画は、その時からスタートした感じです。

だからラフの段階では出産シーンから始まる予定だったんですよ。とはいえあのシーンが最初だと観客は映像に衝撃を受けしまって内容が全然頭に入ってこないという意見をスタッフから聞いて。だからちょっとずらしたんです。

Q: 齋藤さんとの出会いを通して、障害に対するイメージは変わりましたか?

僕にとっては、ろう者の友達は齋藤さんが初めてで、彼の周りの人たちと関わるようになってろうの人たちとの関係ができていきました。今まで知らなかったことが多すぎて、衝撃を受けているところです。思い返せばきっと幼少期には周りにも障害のある人はいたんだろうし、相手がこういう体、こういう考え方を持っているからといって特別な思いで接してはいなかったんだろうなと思います。とはいえ、今はそういう部分も大切にしたいと思っていて、感情の動きとか、相手がどうであるということを考えない、知らないでいるということは、ある意味では暴力的なことだと思ったりもしています。当事者といういい方であっているのかわからないけど、そういう友達は特別に扱われたくないと思っているかもしれないんですが、自分がその人のことを知りたいと思う気持ちは、誰でも一緒だと思うんです。新しく知り合った友達に対して、相手がどうであるのか色々と考えながら接している、という感じです。

『うたのはじまり』の一場面

『うたのはじまり』(2020年/日本/86分)

Q: 『対話する衣服-6組の“当事者”との葛藤-』は、どんな気持ちで取り組まれたのでしょうか?

カメラを向ける時は被写体に対してできるだけ真摯にいたいし、カメラを向ける上で疑問が出てきたら、相手との会話の中で解決していきたいという気持ちがあります。対話する衣服でも、一つ一つ次のステップに行く制作過程で、これは一体どういうことなんだろうって自分の疑問を掘り下げていきました。その中で自分を「当事者」にすることでしか考えられない、完結できないということになっていった。もともとそういう風にしようと決めていたことではなかったんですけどね。私も1人の作家としてこのテーマに向き合って、デザイナーたちが重ねた対話の蓄積をもとに、自分も同じ立場になったらどう思うだろう?ということを考えながら編集を進めて。そんな中で、それぞれのデザイナーとの意見の差や個々の身体や心への向き合い方の違いが見えてきて、その面白さに着目しました。

仕事の中には、もちろん最初からこういう形でこういう風に、納期はいつまでに、という依頼はありますし、それによってカメラの扱い方は分けているんですけど。ただ僕の本来の向きあい方としては、フラットな撮り方をしていたい。とはいえ例えば時間がなかったら、仕事をもらっている人たちのために変えないといけない部分もあるので。ギリギリのところを毎回悩んで、カメラを回していますね。

『対話する衣服-6組の“当事者”との葛藤-』の一場面(2021年/日本/90分)

『対話する衣服-6組の“当事者”との葛藤-』(2021年/日本/90分)

Q: 「TRUE COLORS FILM FESTIVAL」で初公開される「うたのはじまり」のその後を追った短編作品「1年ぶりの再会」では、河合さんと齋藤さんが「今」について語り直す様子が記録されていると聞いています。

今回の上映にあたって、初めて「うたのはじまり」の英語字幕版ができたんです。英語字幕って翻訳の過程でいろんな解釈が入るので、僕は英語字幕版を「新作」と捉えていて、これまで観てもらった人にもどういう解釈になっているのかリピートしてみてもらいたい。そんな中で齋藤さんは今熊本に引っ越していて、会わないまま1年が経って、(田端にある映画館「シネマ・チュプキ・タバタ」での再上映をきっかけに)1年ぶりにオンラインで話したんです。その内容が非常に良い会話だった。あと、今の熊本での生活は齋藤さんがよくTwitterにあげていて、それも含めて「齋藤さん、最近どうなのかな?」っていう僕やファンの皆様も思っていることに答えられる、ささやかなおくりものになれば良いなと思って作りました。

Q: これから、どんな作品をとっていきたいと思っていますか?

実は映像表現ということにあまり拘っていないんです。たまたま近くにカメラがあったというだけ。当時好きだった女の子に振り向いてもらうのために脚本を書いたとか、対象との関わりに応えるために、カメラを持ってきた。映像で記録することって、今はいろんな人に開かれている時代になっていますし、時代や自分の考え方が変わっていく中で、自分が使うメディアも変化していくんだろうなと思います。メディアに縛られずに、例えば「歌ってどういうもの?」という根底に立ち返る。相手のことを知るために一度根底に帰り、新しいものを作るために一度崩してみる。ものづくりを根底から考え直したいなと言う気持ちはあります。決まった枠の中で正常でいようとすること、普通ってなんなの?ということにすごく疑念があって、今も既成概念に対してそう考える癖があります。そういう気持ちを大切にしながら、自分もできることは限られていますが、そこも生かしつつやっていこうかなと思っています。

Q: True Colors Festivalは多様性とインクルージョンを称える芸術祭として、特に海外に向けて「One World One Family(世界は一つの家族)」というキーワードでPRを行なっています。河合さんの考える「ワン・ワールド・ワン・ファミリー」について教えてください。

僕はまだ、世界を超えて作品を発表していく機会が少ないので、「One World One Family」という言葉について深くは語れないのですが、あらゆる表現を懸け橋に、人種差別や偏見が、無くなってくれることを願っています。

河合宏樹
映像作家。学生時代から自主映画を制作し、東日本大震災以降、ミュージシャンやパフォーマーらに焦点を当てた撮影や映像制作を続ける。
2014年、小説家・古川日出男らが被災地を中心に上演した朗読劇「銀河鉄道の夜」の活動に密着したドキュメンタリー映画『ほんとうのうた〜朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って〜』が渋谷・ユーロスペースを皮切りに全国海外公開。
2016年、七尾旅人が戦死自衛官に扮した初のライブ映像作品『兵士 A』をBD/DVDで発表、映画作品としても認められ全国劇場公開。
2017年、飴屋法水と山下澄人の初タッグ公演『コルバトントリ、』の映像作品を監督。DVDで発表。
2018年、七里圭監督作品『あなたはわたしじゃない』などの「音から作る映画」シリーズに撮影参加。
2020年、“ろう”の写真家、齋藤陽道の子育てを通じコミュニケーションのあり方にフォーカスしたドキュメンタリー映画『うたのはじまり』が渋谷・イメージフォーラムより全国公開。
2021年、日本財団が企画する多様性とファッションをテーマにしたドキュメンタリー作品「True Colors FASHION対話する衣服-6組の“当事者“との葛藤-」をオンラインで発表。ニューヨーク・フィルム・アワードにてベストドキュメンタリー作品賞を受賞。
Gotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、七尾旅人、クラムボン、蓮沼執太、折坂悠太、青葉市子、yakushima treasure(水曜日のカムパネラ+オオルタイチ) 他、表現者のライブ映像を多数手がける。

TRUE COLORS FILM FESTIVAL 2021
映画『うたのはじまり』公式サイト
True Colors FASHION ドキュメンタリー映像 「対話する衣服」 -6組の“当事者”との葛藤-

True Colors Festival

歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツ。

障害や性、世代、言語、国籍など、個性豊かなアーティストがまぜこぜになると何が起こるのか。

そのどきどきをアーティストも観客もいっしょになって楽しむのが、True Colors Festival(トゥルー・カラーズ・フェスティバル)です。

居心地のいい社会にむけて、まずは楽しむことから始めませんか。

ページトップ