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Meet The Family(TCFファミリーの素顔):八木華

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2021年4月10日

True Colors Festivalをともに作る仲間を紹介する「Meet The Family(TCFファミリーの素顔)」シリーズ。2021年3月に公開したドキュメンタリー映像、True Colors FASHION「ドキュメンタリー映像「対話する衣服」-6組の“当事者”との葛藤-」に登場するデザイナーの一人・八木華さんの本作やファッションについての想いをご紹介します。

True Colors FASHION:2021年3月5日公開

Q: 八木さんがファッションを学ばれた「ここのがっこう」は、「世界と自分自身の装いの原点に向き合いながら、ファッションを学ぶ」場所として、ファッション業界の中でも独自のアプローチで知られます。八木さんが感じる自身の「原点」とは、どのようなものですか?

代々板金職人を営む家に生まれ修復というルーツを持っています。高校時代に応募した装苑賞がきっかけでファッションの道に進もうと思い、ここのがっこうでファッションを学びました。2019年にITSでファイナリストに選ばれた時には、REPAIRというタイトルでコレクションを作りました。REPAIRコレクションは私のルーツである修復から始まり、青森で生まれた「ぼろ」や「千人針」を手掛かりに、古布を手縫いでつなげたり、陶器の修復に使用する漆を素材に制作をしました。SNSや人との繋がりにより、約100人の人の力を借りて作品を完成させました。

True Colors FASHIONに参加したデザイナー(左)とモデル(右)

八木華(左)と須川まきこ(右)

Q: 今回ペアを組まれたモデルの須川さんは、義足ユーザーでご自身もアーティストとしてイラスト制作をされてますね。須川さんのドレスのアイデアはどんな風にして生まれましたか?

須川さんが描いたスカートを自分でめくる女性の絵がきっかけに生まれました。須川さんの描く女性は身体に対し能動的です。そのことに須川さん自身の身体に対する態度が表現されているため注目しました。スカートの内側に装飾を施し、須川さんがスカートをめくることで装飾が見える様にデザインしました。須川さん自身が、『めくる』という行為を通じて能動的に服に介入し、それによってデザインが変わるということが大切です。

Q: ドレスの装飾がとても特徴的で美しいですね。

須川さんの絵に登場する花を参考に、溢れるイメージの中、華奢(きゃしゃ)に見える義足で力強く立つ姿を表現しました。表面の紺は須川さんの好きな色で彼女によく似合う色です。裏面の多様なピンクは須川さんの描く世界のイメージです。その2色を表裏一体にしました。顔周りのデザインは須川さんの義足以外の身体的な特徴に注目したときに、切れ長の目が魅力的だったので、目以外をあえて隠すデザインにしました。私はもともと、須川さんとは逆に身体を全て覆ってしまう様な作品を制作していた為、ニカブなどに象徴される隠す美学を用いることで、私のアプローチも混ぜました。紺の生地にはエクステで刺繍が施されています。これは須川さんの「乱気流」というタイトルの個展を見に行った際、乱気流の中で強くたたずむ女性を印象的な髪の毛の描写で描いていたためです。須川さんの髪の毛の描写を刺繍に取り入れました。

Q: 制作期間はどれくらいですか?須川さんと組む中で、八木さんの中で生まれた変化について聞かせてください。

制作期間は2ヶ月ほどで、一人で行いました。須川さんはすでに自身の身体について絵を描くという形で向き合い続けているため、私はどの様にその中に入ればいいのかわかりませんでした。今になって足をなくした時の気持ちや、感情の吐露を引き出すのも暴力的な気がしてしまい繊細に考えるほど何も話せなくなりました。幸い須川さんは足を失う前から絵を描いていて、須川さんの絵はその様な状態の私に語りかけてくれたと思います。須川さんの作品は須川さんについても須川さんの意識の外の問題についても言及します。作品を作るとはこういうことなのだと実感しました。制作の期限が迫っていたこともあり、私にできる対話は須川さんの作品から丁寧に読み取り服に写していくことだと思いました。須川さんの作品を通して須川さんと向き合うことは矛盾しないと思いますが、もっと泥臭く向き合う可能性もあったのだろうと思います。

Q: 須川さんとのコミュニケーションの中で、印象に残っていることはありますか?

ないはずの足が痒くなったり痛くなったりする幻肢痛の体験談は驚きました。どの様な感覚か共有することは難しいですが、須川さんと車椅子ユーザーでモデルの葦原さんが幻肢痛の話題で盛り上がっている様子はどこか明るく、印象に残っています。

点字はSHIBUYA SCRAMBLE SQUAREで開催された

True Colors FASHION「対話する衣服」展搬入の様子

Q: 今回のドキュメンタリーへの出演を通して伝えたいメッセージはありますか?

何かに誠実に向き合おうとしたときに近道はなく地味なことの積み重ねということ。また、対話には正解がないということ。相手を思いすぎて言葉が出ないことも、時間が足りないことも、一方的になってしまうこともある意味では自然で、簡単に人は分かり合えないということこそが大切であること。その上で相手への想像力を持ち続けること。

Q: ファッションが、今後よりインクルーシブで多様な身体に適応するものになるためには、どんな課題があると思いますか?

商品や道具としての具体的な問題解決が必要な一方で、ファッションの持つ想像力を作り手が信じる必要を感じます。人の形が表現のベースにあり、生活とも関わり、生命的で、古くからのルーツを持つファッションだからこそ、多少現実から離れたところで表現しても人の心に響くと思います。

Q: True Colors Festivalは「One World One Family(世界は一つの家族)」として、多様性とインクルージョンを称える芸術祭です。八木さんの考える「One World One Family」について教えてください。

家族の持つ意味や、そこからこぼれ落ちることや救われること、新しい家族の形について地道に考えるということだと思います。

八木華
1999年東京都生まれ。東京都立総合芸術高校卒業後、「ここのがっこう」で学ぶ。2019年に欧州最大のファッションコンテスト「ITS(International Talent Support)」のファッション部門ファイナリストに最年少の19歳で選出される。

True Colors FASHION ドキュメンタリー映像 「対話する衣服」 -6組の“当事者”との葛藤-

True Colors Festival

歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツ。

障害や性、世代、言語、国籍など、個性豊かなアーティストがまぜこぜになると何が起こるのか。

そのどきどきをアーティストも観客もいっしょになって楽しむのが、True Colors Festival(トゥルー・カラーズ・フェスティバル)です。

居心地の良い社会にむけて、まずは楽しむことから始めませんか。

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