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True Colors ACADEMY

True Colors ACADEMY 参加メンバー座談会

「社会に参加する当事者」として
対話し学ぶダイバーシティ

「ダイバーシティ」というテーマに多くの人が触れる機会をつくり、社会の“暗黙のルール”や、自分にとっての無意識な“当たり前”を「ズラす」。多様な社会をつくるために、そんなプログラムを通じてダイバーシティを学ぶ学校「True Colors ACADEMY」が2019年秋に開校した。レクチャー(公開講義)とスタジオ(対話と実践の場)の2部門で開催されたが、一般向けの最終発表・展示を目前に新型コロナウイルスの影響で展示会は中止に。関係者のみで実施したオンライン最終発表会を経て、一部のSTUDIOメンバーによる振り返りの座談会を開催した。

座談会参加者

・内田 直生/理学療法士・パーソナルトレーナー
・河野 陽介/声楽家・おっさんレンタル所属
・菊永 ふみ/異言語Lab.代表
・式地 香織/建築家・コドモチョウナイカイ代表
・杉原 賢 /ジュエリーデザイナー・Switch de Switch代表
・聞き手:石川 由佳子/True Colors ACADEMY ディレクター

境界を越えて、いろいろな多様性に出会いたい

――自己紹介と、True Colors ACADEMY(以下、アカデミー)に参加した時の動機や期待感について教えてください。

杉原:
僕は今「ふたり指輪」というコンセプトで指輪の事業を行なっています。前職ではオーダーメイドジュエリーのデザイナーをしていたのですが、事実婚やLGBTQの方々が「『結婚している』と思われるのが不都合だから指輪を着けられない」と話すのを聞いて、「結婚指輪は今、差別的な視点で捉えられることもある」という課題に気づきました。そこでわざと解像度を下げて、「結婚(指輪)」と関係性を限定せずに「ふたり(指輪)」というコンセプトの事業を行なっています。「ふたり」という関係性にダイバーシティを見出した事業をやっているという当事者性と、僕自身が韓国籍で、子どもの時から抱いているマイノリティ意識という当事者性から、アカデミーに参加してアクションを起こしたいという思いがありました。

式地:
「コドモチョウナイカイ」という子ども向けのデザインワークショップを主催しています。子どもたちがチームを組み、お祭りをつくり、フィールドへ出てまちの人たちを元気にしよう!という趣旨です。毎年テーマを変えていて、今年はちょうどオリンピックパラリンピックイヤーなので、今「デザインピック」をテーマに様々なイベントを組んでいるところです。デザインピックのコンセプトは、デザインの力で個人の限界や他者との間にある境界を越えていこう、というもの。アカデミーには、そういう境界をクリエイティブに越える方法を見つけ出したいと思って参加しました。

河野:
声楽家として歌を歌ったり教えたりしています。その傍らで、地元の茨城県で自分がゲイであることをカミングアウトしながら性的マイノリティにまつわる活動を5年程行なっています。そうした活動をする中で、人に言えないことに悩んだりモヤモヤしてるというのは、僕らLGBTQだけじゃなく、色んな人に当てはまることに気づきました。性的マイノリティに限らず、広くダイバーシティの観点で色んな人と出会い意見交換をしたいと思い、アカデミーに参加しました。

菊永:
一般社団法人「異言語Lab.」の代表理事をしています。私はろう者の立場で、ろう者、難聴者と聴者がお互い協力して謎解きをするゲーム「異言語脱出ゲーム」の開発・実施を行なっています。アカデミーには、自分と異なる人、異なる考えを持つ他者に出会いたい、色々な人に出会うことで私の知らない新しい世界を見つけたいという思いで参加しました。また、自分の事業に持ち帰られるものがあったらいいな、という期待もありました。

内田:
僕は理学療法士としてフィットネス領域で活動しています。以前は病院に勤めていましたが、今はフリーランスで障害のある方を対象にトレーニングの指導をしたり、障害のある方がもっと運動を楽しむためにはどうすればいいかという課題に現場で取り組んでいます。具体的には、乙武洋匡さんが取り組んでいる「乙武義足プロジェクト」に参画して仕事をしています。

プロフェッショナルな世界ではありますが、日頃関わる人は近しい領域の方ばかりで。「身体障害とアクセシビリティ」というテーマについて、知らない領域のいろんな人との出会いを通じて新しい視点を得たい気持ちがあり、アカデミーに参加しました。

他者と手を取り合い協働するということ

――多様なバックグラウンドをもつ人と、いざ一緒に議論したり作品制作をしてみて、どんな気づきや自分自身へのインパクトがありましたか?

河野:
2回目のセッションの時に、僕のグループはなかなかまとまらず、途中からメンバーのすれ違いが起きて、グループ発表の場を「これが私たちの作品です」と見せるものがない状態で迎えました。今でもあの時どうすれば良かったのかまだ分からない部分もあるんですが、「マイノリティ当事者」「多様性への関心」といった軸で集った仲間とはいえ、それこそみんなそれぞれ違う意思や信念があるわけで、うまくいくこともあればいかないこともある。

とはいえ、あのチームでは誰も排除されなかったと思うし、自らその場に居続けようとした人もいればフェードアウトした人もいました。でもフェードアウトすることを非難する人はいませんでした。今思えば、これこそが多様性を尊重するということだったのではと思います。

菊永:
「アクセシビリティ」がテーマのセッションの時、フィールドリサーチで弱視になるゴーグルをかけて街に出たことがありました。いざその体験をもとにプロダクトをつくる時、私は最初視覚障害者にアプローチする作品を考えなきゃと思っていたんです。でも私はろう者だから、視覚情報の価値は視覚障害をもつ人と真逆。だから、「見える」「見えない」が共存する作品を目指しました。

最終的に、『OTTO』という、鑑賞者の発した音声を認識し、蓄積して、次に来る鑑賞者がその音声を聞きながら鑑賞を楽しむという作品を作ったんですが、この蓄積した音声は、文字に起こすこともできるんですね。これは結果的に我々ろう者にとっても役立つことが分かったのがおもしろかったですね。いろいろな社会のいろいろな人たちの音声を貯めること。そしてそれを文字にして表示するなんて、我々にとっても楽しめるコンセプトです。結果的に、お互いの良さを引き出せるものになったのが良かったです。

内田:
「不自由を着る」というコンセプトで作品をつくるときに、アカデミーのプログラムデザインをしているライラが言った言葉が印象的で。「現代を生きる身体障害のない人は、ボディアウェアネス(身体への気づき)が不足してるんじゃないか」というコメントで、僕はそれにすごく共鳴したんです。

その後フィールドリサーチとしてチームで美術館に行った時、アクセシビリティの面で気になる点は随所にあったんですが、果たしてそのパートを設計した人たちが「身体」に対する気づきの実感をもっているのか、例えば車イスのスペースの規格を定める時に、担当者は自分のフィジカルな部分から体感して設計しているのか、と疑問が生まれてきたんです。「不自由を着る」というコンセプトは、膨大な情報が溢れる時代だからこそ、肌で感じることや身体性をもって実感を得ることの重要性に気づけたことは大きな収穫でした。

分断を笑いに変換するアプローチ

――印象的だった作品はどんなものがありましたか?

杉原:
『POIESIS 〜福・笑い〜』という作品が素晴らしかったです。雑誌を切り抜いてパーツをつくり、それをコラージュして「福笑い」のように相手の顔を作るという作品で、余白のデザインのされ方が美しくて。コラージュする人の思考や視点のフィルターがピュアな状態で現れる仕掛けになっている印象があって、その表現方法は、言葉を介さずに伝えるポテンシャルのある作品だなと思いました。

式地:
お正月シーズンだったこともあって福笑いなんて名前を付けたけど、あの作品の肝は、自分を正しく理解してほしい、わかってほしいと願うよりも、「他人は自分をどういう風に理解しているか」という視点をもつのはどう?と投げかけることでした。

そして相手の解釈に対しても「そうじゃない」「そんな風に思われるのはイヤ」と思うのではなく、「ああそう見えているんだ!面白いねアハハ!」って笑いに変換できると、人と人との間にある分断や反発を解消できるんじゃないかな、という観点でのアプローチでした。

コミュニケーションが難しいかもしれないけど、自分と異なるものを排除せずに向き合って対話に挑戦することのやりがいや楽しさってあると思うんです。そういう心持ちをあと押しするような作品がアカデミーにはたくさんあって楽しかったですね。

アカデミーで経験したのは、「社会に参加する当事者」としての当事者意識

――約半年の活動でしたが、アカデミーにどんな可能性や価値を感じましたか? また、普段の自分の日常、仕事などに反映できることはありましたか?

河野:
僕は「おっさんレンタル」という、「お困りごとの解決のためにおっさんをレンタルする」というサービスに提供者として所属しているんですが、自分がレンタル活動の統括側になって何か企画をやりたいと思っていました。アカデミーに参加して浮かんだのは、「マイノリティレンタル(仮)」という企画。当事者はもちろん、非当事者でも「こういったマイノリティ性に関心がある」とか「当事者の友達がいる」といった人が登録し、普段だったら「周囲に理解されなかったらどうしよう」と打ち明けられないような話を彼らに聞いてもらったりするイメージです。同じような境遇の人の話を聞けたり、「家族に当事者がいる。もっとLGBTQの人のことを理解したい」という人が、第三者としてのLGBTQの人に会って話を聞けたり。

アカデミーで、あらゆるマイノリティ性をもちそれをポジティブに生かしている人と沢山出会えました。彼らにも参加してもらい、今回の繋がりを今後も続けられたら嬉しいですね。

内田:
仕事で、パラアスリート選手と一緒にアウトリーチ活動を小学校で行うことがあります。片腕の選手や義足の選手がコーチとして参加するんですが、選手たちの指や足を見た子どもたちが「なんで指が3本なの?」と聞いたりすることがよくあります。でも選手からすると、「君はなんで5本なの?」ですよね。生まれた時からずっと指は3本なんですから。そういう問いのやりとりって当事者性を育むと思っていて、河野さんの「マイノリティレンタル(仮)」を活用して、そんな問いが生まれる場をつくっていきたいと思いました。

式地:
レンタル企画いいですね、早速利用したいです(笑)。普段子ども向けの活動をしていて思うのが、子どもって周りの大人の態度から単なる違いを「変」と思ったりして、偏見がつくられていく気がしていて。そんな大人のフィルター越しに排他的な環境で生きていくよりも、偏見をもたずに幅広くいろんな人に出会い、その人たちを友達だと胸を張って言える社会にできたらなって思います。素敵な大人がいっぱいいるということも知ってもらいたいから、是非「マイノリティレンタル(仮)」でいろんな人を“レンタル”して、私が代表を務めている「コドモチョウナイカイ」で子どもと交流する企画を行いたいと思います。

実は以前この話を聞いて、企画書もつくり予算も取れているので、新型コロナさえ落ち着けば実動できます!

全員:
おおおお!(拍手)

式地:
例えば“レンタル”したLGBTQの人から話を聞いて、さっき話に挙がった顔をコラージュする作品『POIESIS 〜福・笑い〜』でその人たちを思い浮かべながら顔をつくり、集まったいろんな人の顔を一冊の絵本にするといったアウトプットもできそうですね。

私たちがアカデミーで経験したのは、「社会に参加する当事者」としての当事者意識だと思うんです。それはみんなに当たり前にあるべきなんだけど、どこか忘れがちなことだから、その当事者性を感じる場をもちたい。顔の絵本づくりに関わった子どもたちが、その「顔」を自分の作品として認識するのは、その当事者性を促すことにも繋がると思います。

コミュニティを生かして、風通しのいい社会をつくる

――アカデミーの活動自体は終わったところですが、今後もコミュニティとしては継続させたいと思っています。今後、どんな展開を期待しますか?

河野:
まずは……気軽に同窓会がしたいですね、「学校」ですし(笑)。小さなことかもしれませんが、アカデミーのメンバーならそういった集いからまた何かアイデアが生まれるかもしれないですし、やることに意味があると思います。アカデミー参加者が繋がり、その知り合いとも繋がりどんどん輪が広がって、親戚が増えるみたいになるといいなって。「前に生まれたあのプロダクトを、自分の仕事のアイデア出しのサンプルにしたいんだけどどうかな?」とかね。そういう繋がりでも十分価値があると思うんです。

全員:
いいね、やりたい!それやりましょう(笑)!

内田:
僕は頭でっかちに考えすぎるタイプで、つい生真面目に正解を求めてしまうタイプの人間です。でもアカデミーで体感したのは、課題解決にはユーモアがすごく大事ということ。笑いや余白やユーモアが問題を解決したり、プロダクトをつくる上のキーファクターになることを、作品づくりのプロセスで肌身をもって学びました。アカデミーのコミュニティには余白や「あそび」をつくったり生かすスキルのある人がたくさんいるので、自分の領域に彼らを引き込んでいきたいですね。

杉原:
アカデミーに参加して良かったのは、思考の換気ができたこと。いつもはインプットした情報を自分の中だけで咀嚼して、フィードバックしアウトプットしていただけでしたが、今回“外気”を入れることで自分の中に新しい空気が生み出されるような感覚がありました。今後もアカデミーのコミュニティをハブに対話を行い、新しい価値感が生まれるようなことをしたいですね。

最近PodcastとYouTubeでラジオ配信を始めたんですが、ゲストを介して新しい景色が見えてくるのがとてもおもしろくて、例えばですがそういった手法をとるのもいいかもしれません。

菊永:
アカデミーへの参加で「当事者が集まりやすいかどうか」という観点が気になっていました。どこかに集まるという時、そこに行くだけでもすごくエネルギーを要する当事者もいると思うんです。車椅子のアクセスといった物理的なものだけじゃなく、気持ちの面でも。私も結構負荷が掛かっていて、いろいろな葛藤がありました。その葛藤とともにみなさんと一緒に活動に参加できた半年は、人との出会いはもちろんうれしかったし、プロダクト制作の実績をもてたよろこびもあります。

一方で、当事者であるということは一生続きます。一生の課題で、「これでおしまい」ということはありません。だから今回短い期間でプロダクトを3つも生み出せましたが、あの機動力で、つくったものを本当の意味で社会に出していくことができたら本当にいいですね。ぜひ、これで終わりじゃなくて、今後も引き続き当事者同士として寄り添い合いながら、活動できたらと思います。

式地:
アクセシビリティがテーマのワークの時、肢体不自由ということに興味が持てて、それを自分なりに奇異の目ではなくおもしろがり、相手も不快にさせない方法を考えるのがとてもおもしろかった。スタートは課題視点でも、こういうポジティブなモチベーションとアプローチで解決方法を見つけ出す方法論は大事だと思います。そういったものの見方や考え方を、世の中の人がみんなが実行できたら、もう少し風通しがいい社会になるのではないでしょうか。今回学んだことを実際に展開してみたいと今すごく思っています。

構成・文:原口さとみ

True Colors Festival

歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツ。

障害や性、世代、言語、国籍など、個性豊かなアーティストがまぜこぜになると何が起こるのか。

そのどきどきをアーティストも観客もいっしょになって楽しむのが、True Colors Festival(トゥルー・カラーズ・フェスティバル)です。

居心地のいい社会にむけて、まずは楽しむことから始めませんか。

Meet The Family(TCFファミリーの素顔):タン・ビー・ティアム

True Colors Film Festival シンガポールPRチーム

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