True Colors ACADEMY
第1回目スタジオ活動レポート
アイデンティティはどこにある??
公募で選ばれた44名のメンバーと共に、毎月様々なダイバーシティのテーマに基づきワークショップを開催する「STUDIO(スタジオ)」プログラム。第一回目は「アイデンティティ」をテーマに、普段は後回しにしている自分のことや他者のことを深く考えてみることを試みた。自分とは何か、その存在は何が形作っているのか。そんな対話から見えてきた物をそれぞれが作品にして発表した。
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スタジオプログラムの構造:毎回異なるテーマに基づき、1日目はチームで対話を深め、2日目にそこから発想したアイディアを作品化して発表する。制作期間は3週間前後。素早くカタチにしていくことを重視したプログラムだ。
テーマは「アイデンティティ」、さてどう料理する?
「アイデンティティ」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろう。一般的には「同一性」「同質性」等を表すが「所属性」や「時間的経過を経ても変わらないもの」等、解釈やその定義も抽象度が高くつかめるようでつかめない言葉なのではないだろうか。今回はそんなキーワードを起点にランダムにチーム分けをしてそれぞれ作品を制作していった。
まずは、チームで対話してみる。
「まずはそれぞれアイデンティティという言葉から連想することを共有してみよう」そんな形でチームごとの対話が始まった。それぞれの想いを紙に書いて共有するチーム、いきなりゲームを始めてお互いの感覚をつかもうとするチーム…チームごとにさまざな方法でテーマの言葉に近づいていく。
アイデンティティをテーマにした作品発表
いよいよ作品発表の日。約1カ月の間、毎日メールのやり取りがやまないチームや毎週仕事終わりに集まって手を動かしながら制作するチームなどそれぞれのやり方で作品のアイディアを形づくってきた。発表の当日は実に様々な解釈とアイディアのアウトプットがでてきた。一つづつ紹介していきたい。
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No.01
作品名:LETTER TO ME
作者:岩本 萌、藤井 純子、杉浦 草介、岸田 ゆか
作品メッセージ:
LETTER TO MEのLETTERはオランダ語でレッテルという意味。アイデンティティの意味は自分とは何者であるのかというパーソナルなものであるが、レッテルのような使われ方をしていることに違和感を感じた。そこから、自分宛に自分についての言葉をたぐり寄せるための「キット」を開発。小さな箱を開け3つのステップにしたがって進めていくと、最後に自分に宛てた手紙が出来上がる仕組みだ。
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No.02
作品名:POIESIS 〜福・笑い〜
作者:式地 香織、橋本 美和子、福井 彩香、川端 渉
作品メッセージ:
「アイデンティティは1つの完成されたものではない。多様な自分で構成されていて、私だけでつくりあげるものではない。もの、こと、ひと、他者が介在し、その関係性の表れとして「私」はかたどられる。」そんなインスピレーションから、それぞれのスマホにある写真を印刷しお互いの顔を作り上げていく新しい福笑いのゲームを考えた。これは、私が認識する「私」と、他者が認識する「私」との間のズレを楽しむゲームである。スマホに無造作に撮られた写真の断片には「私」がみたもの、きいたもの、発した言葉、感じた香り、味わったもの、心動かされたもの、心震わせたもの、喜怒哀楽、いろいろなピースがある。これらのピースを組み合わせて「私」の顔をつくって下さい。
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No.03
作品名:鍋革命
作者:石川 楼丈、斉藤 有吾、戸村 愛、ひょっかめ
作品メッセージ:
アイデンティティと「疎外感」との関係についての認識を確認するための、「疎外感」の解体を目指したゲームの指示書(スーパーバリアフリー・カード)とそのカードを使ったゲームを開発。「すべてとはいえないが、多くの「疎外感」は勘違いなのでは?多くの「疎外感」には、先行する何らかの「判断」が先行しているのでは?」そんな問いから、多くの判断が発生するであろう「鍋を作る過程」に着目し、自分の理想の鍋を目指すゲームを考えた。カードには役職カード、具材カード、アクションカードの3種類はある。ゲームスタート時から隠れたヒエラルキーのある中でコミュニケーションを取り合い、探り合いながら自分の目的を達成する過程で、人は何を大切にし、判断をしていくか?疎外感を感じるのはどのようなときなのか?を発見していくことができる仕掛けを作った。
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No.04
作品名:ほぼ1秒1答!〜自己色と他者色を混ぜた色〜
作者:青木 萌、桑原 沙也加、佐々木 優佳、杉原 賢
作品メッセージ:
アイデンティティが語られる時、「わたしは〇〇である」「わたしは〇〇をしている」など、何か特別なひとつで自分を代名するという事があるように思われる。しかし、実際には私たちはとても複雑な性格や考え、感情、感覚をそれぞれが持っている。それから、この人といる時の自分はこういう感じ、あの人といる時の自分はこういう感じ、というように他者との関係の中で自分の在り方は様々に変化するもの。自分が観ている「わたし」だけでなく他者から観た「わたし」の像もある。「わたし」というものは決してひとつではなく多面的で複雑な関係的なもの。
この作品は、50の質問に即答することで反射的に現れてくる、自分視点と他者視点の「わたし」を露わにし、その差異から自分の気づいていない「わたし」を発見するワーク形式の作品である。
ここでは、およそ1秒1答で瞬間的に自分と他者について質問に答え、普段無自覚な「わたし」に気づくための体験型作品とした。自分視点の「わたし」の像を青色、他者視点の「わたし」の像を黄色として、それらを混ぜ合わせた緑色の「わたし」を新たに発見することを意図している。
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No.05
作品名:Gonnabee’s 〜Identity Auction House〜
作者:銭 宇飛、平良 恵、Janessa Louise Roque、中島 梨乃、菊永 ふみ
フィリピン・日本・中国といった多国籍のこのチームでは、「アイデンティティなんてもんはそもそもそんなに重要?」という問いから、劇作家であり女優のメンバーを中心に、アイデンティティを売り飛ばす「アイデンティティのオークションハウス」のパフォーマンスを制作。当日は本人が自分の嫌いな部分をオークションにかけその価値をプレゼンテーションし、観客はそれをオークション形式で購入できるという参加型のパフォーマンスを行った。アイデンティティなんて深く考えなくていい、自分にとって重大だったり嫌な特徴は、誰かにとっては価値になる。そんなメッセージが込められた作品である。
「私」のことは思ったより知らない。
「自分のことを思ったより知らないことに気付かされた」「自分とはなんなのか考え混んでいたけれどそもそもそれは周りによって変わるものだしそんなに重要じゃないのかも?」など「アイデンティティ」という抽象的なテーマをそれぞれが対話を通じて深ぼっていった第一回目。一人で考えるのではなく様々な人生背景をもつメンバーとの対話によって色々な発見があった。第二回目は「アクセシビリティ」をテーマに実際のまちに繰り出しより実践的なリサーチとアウトプットを目指していく。
(執筆・編集:石川 由佳子)