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第2回アドバイザリーパネル・ミーティング
(2019年11月)

未知なる鑑賞体験を目指して!
True Colors Festivalを振り返る:1

2019年11月に行った第2回目のアドバイザリーパネルミーティングでは、True Colors Festivalの幕開けとして9月に実施したTrue Colors DANCE、10月に実施したTrue Colors BEATSを具体例に、アクセシビリティについてのフィードバックを行いました。いくつか感想や率直なコメントをご覧いただくことで、True Colors Festivalの試行錯誤の様子を紹介します。

目次:
多様な人に向けて、偶然のはじけるような楽しさを〜True Colors DANCE〜
アジア圏から移り住む人々のコミュニティに向けた発信を〜True Colors BEATS〜
ろう者に分かる作り方をしていることは、きっと聴者にも伝わる
未知なる鑑賞体験を目指して

  • True Colors DANCE会場にて、イルアビリティーズを中心にしたトークタイムの様子

多様な人に向けて、偶然のはじけるような楽しさを
〜True Colors DANCE〜

True Colors DANCEレポート:渋谷のど真ん中で「Breakin’!」――「True Colors Festival」の開幕を告げる豪華なダンスの応酬
https://truecolors2020.jp/topics/2316/

森真理子(司会:日本財団DIVERSITY IN THE ARTS):
True Colors DANCEでは、多国籍からなる障害者ブレイクダンスチームILL-Abilitiesを中心に、11組のダンサーたちの共演を通して、障害、国籍の壁を超えていくダンスコミュニケーションの可能性に挑みました。当日は渋谷ストリーム稲荷橋広場を会場に、大階段を客席に見立ててダンスバトルを行いました。客席では車いすの方や立っていることに不安がある方に向けて「ゆずりあいエリア」のスペースを確保したり、MC、解説の手話通訳者の方に立っていただいたりしています。当日足を運んで見て、どのように感じられましたか?

廣川麻子さん(以下、廣川(敬称略)):
たまたま通りかかって「何やってるのかな」っていう感じで足を止めていた人が多かった印象があり、大きな効果があったと思います。ただ、字幕や手話通訳など鑑賞サポートのメニューは会場の下のほうにあって、遠くにいた一般の来場者の人たちには見えなかった。そうするとTrue Colors Festivalの趣旨が伝わりにくいですよね。他のイベントとの違いをどう伝えていくのかは、今後も課題になってくると思います。

林健太さん(以下、林(敬称略)):
僕もたまたま出合う、偶然のはじけるような楽しさが、True Colors DANCEのすごくいいところだと感じました。視覚障害の人って「たまたま出合う」チャンスが少ないので、もし渋谷を通りかかった視覚障害の人をたまたま呼び込めるような何かがあったら、さらに価値を持たせられると思います。

加藤悠二さん(以下、加藤(敬称略)):
メディアのカメラが、客席からステージへの視界を遮っていたのが気になりました。ゆずりあいエリアの場所もステージを横から見るような位置でしたし、「何を大事にしているのか」「誰のためのイベントなのか?」っていうのが、分かりづらくなってしまっている印象でした。

森:
席については、誰もが全ての席を自由に選べることが理想ですが、車椅子席、字幕、手話通訳など、会場の物理的制約のなかでどう采配していくのか、難しい課題でした。第1回目のイベントで、マスコミの注目度も高く、加藤さんのご指摘のようにカメラ位置が客席の多くの場所を占めていたことも否めません。
ほかには、インフォメーションブースのカウンターが高く、車椅子の方には不親切だったと事務局内で反省点として上がりました。この後のイベントではブースの組み方、高さを調整するようにしています。

  • 大階段を客席に見立てた会場風景。人々が階段に座り込んでダンスの様子を見守った。

アジア圏から移り住む人々のコミュニティに向けた発信を
〜True Colors BEATS〜

  • True Colors BEATS参加者の集合写真。ディレクターのサンティアゴ・バスケスを中心に、様々な楽器を持った約100人が笑顔を向けている。

True Colors BEATSレポート:ダイバーシティということばからはじまる無数の広がりを感じた〈True Colors BEATS〉の一日
https://truecolors2020.jp/topics/4628/

森:
True Colors BEATSは、生まれた国や地域や人種の異なる人たちが集まって、リズムを奏でることで交流し、新しい音楽を作ることを目指しました。当初は代々木公園での開催を予定しており、野外ステージだけでなく会場全体を使って、多国籍を意識したフードドリンク、マーケット、子ども向けワークショップも計画していました。残念ながら悪天候のため、会場を日本財団ビル8階に移して、一部のワークショップとフードドリンクチームのみが参加するイベントを行いました。そういう意味では、会場の規模が縮小したこともあって、意図通りに多様性を伝えるには物足りない部分がありました。ただし、一部でも実施できたのは良かったし、一方で会場のライブ配信を通して、想定以上の方々に演奏を届けることもできました。

オードリー・ペレラ(エグゼクティブプロデューサー):
True Colors BEATSのテーマには、移民や日本に来られている外国の方との協同がありますよね。イベントは国際的ではありましたが、参加した外国籍の方は南米など偏った国の方々が中心を占めていた印象です。日本に住む外国人の人口比率から見ると、今後はフェスティバルとしてアジア圏から移り住む人々のコミュニティに対してどういった発信ができるか、より一層考えていく必要があります。彼らが集まっているところにこちらから出向いていく必要があるし、それぞれに自分の国のことを思い起こさせるような仕掛けも、打ち出していかないといけないと思います。

森:
True Colors BEATSは移民、労働のために日本に来ている方、留学生など、日本にいるいろいろな外国の人に多く参加してもらいたいと思って始めたんです。ただ、事前告知が思うように行き届かなかった面がありました。例えば簡体語やタイ語など、日本に多く滞在している外国の方の言語で5種類ほどチラシを作って配ったんですが、あまり成果が得られませんでした。各国語より「簡単な日本語」で書かれたチラシの方が広く読んでもらえるのではないか、というフィードバックもいただきました。やりながら、学びながらでしたが追いつかない部分もあって、今後はその辺りも見直していきたいと思います。

ろう者に分かる作り方をしていることは、きっと聴者にも伝わる

林:
会場設計という側面では、似顔絵コーナーがあったり、ライブがあったり、飲食ができたり、会場にはいろんな体験ができる要素が詰め込まれていましたよね。ただ障害のある人って、そういう情報を事前にウェブサイトで見ただけでは、きっと自分に向けられてないだろうなって思っちゃうと思うんです。だから例えばライブには音声ガイドが付くとか、UDトークの環境があるとか、あなたに向けてますよ、楽しい経験を提供する準備をしていますよっていうことも、もっと伝えていければなって思いました。

森:
True Colors DANCEではモニター字幕、字幕が見えやすい場所への案内、True Colors BEATSではトークの日本語通訳、手話通訳をいれるなど、アクセシビリティの向上にも取り組んでいました。視覚・聴覚障害の人に向けてこういったイベント開催をお知らせする場合、どんな方法が有効でしょうか?

林:
視覚障害者って別に一種類の生き物じゃないから、ライフスタイルによってばらばらだと思うんです。データによると、ラジオを聞いてる人もいるけれど、テレビを視聴している人のほうがはるかに多かったりします。また、特に若い世代は、スマホとかネットとかを使う人も多いです。視覚障害だからこれっていう1個の方法に集約するんじゃなくて、なるべく分散させていろんな方法で情報を伝えるといいんじゃないのかなと思います。

廣川:
比較的若い世代のろう者は、インターネットで情報を発信・収集することが多いですね。InstagramとかFacebookとかTwitterとか。ろう者の中には情報を発信する立場、発信力の高いろう者、インフルエンサーがいます。そういった方々に情報発信の協力をお願いできれば、その方のファン、その人たちをフォローしてる人が情報を得て、結果的に告知募集を広げることができます。または動画ですね。ろう者の場合は、字幕文字ではなく手話で説明をする動画があるといいかなと思います。

森:
True Colors Festivalでは、聴覚障害の方に対して今後も字幕や手話を使って情報を視覚化していきたいと考えています。当日の会場案内やステージのMC、お客さんの反応などの情報は、どこまで視覚化できるとよいでしょうか?

  • ステージでの会話をその場で大型ビジョンに字幕表示するためのオペレーションブースの様子

廣川:
ホームページ上の動画を見ていると、例えばTrue Colors DANCEの告知動画には字幕がついているんですが、音楽の説明の字幕がない。どんな音楽が流れているのか説明の字幕があると、ろう者にも分かるような字幕の作り方をしているなっていう受け止められ方をすると思います。そのことはきっと聴者の人にも伝わると思います。他にも同じテキスト字幕でも、英語音声を日本語に翻訳した字幕なのか、発言そのものが日本語なのかっていうのが分からない。例えば英語の発言に対して日本語の字幕を付けてるときに翻訳が入った字幕ですよっていう情報があると、アクセシビリティが高まると思います。

森:
音楽の内容についてはどうでしょうか?例えば「ジャズが流れています」でいいのか、もうちょっと詳しく「太鼓のリズムがビートを刻んでいます」みたいな説明があったほうが良いのでしょうか?

廣川:
それは個人差なんですよね。ただ、ジャズやロックなど、流れている音楽ジャンルの説明は、最低限必要な情報だと思います。音楽のことは詳しくわからないんですが、激しいビートがあるとか、その音楽がイメージできるような情報が加わると、さらにイメージが膨らんで、興味が増すのではないかなと思います。

川俣さん(日本財団職員、聴覚障害の当事者):
例えば水の音とか、ドアをノックする音とか、車の通る音とか、音楽だけではなくて、自然に入ってきてる音もあると思います。意図的に流しているものではなくて、環境音的なものですね。そういったものも大切なものだと思います。全部っていうのは難しいでしょうが、動画の流れと関係するような音に関しては、(水の音)みたいなのが入ると個人的には嬉しいです。

未知なる鑑賞体験を目指して

  • 盲ろうの当事者の方が、通訳者の触手話を通して舞台鑑賞をしている様子

森:
True Colors DANCEやTrue Colors BEATSなどを含めて、パフォーミング・アーツには、聴覚・視覚情報として単体で切り離しては伝えきれない、複合的な要素を盛り込んだ鑑賞体験をもたらす力があります。その中で音声情報を視覚化、視覚情報を聴覚化していくことの難しさを感じます。

林:
僕が美術館などで視覚障害のある人に向けた観賞プログラムをやるなかで、会場までの行き方とか、触地図、点字のパンフレットの有無って、情報として伝えやすいと思うんです。これまで当事者団体や教育現場が作ってきた伝え方の知見が揃っていますからね。一方で視覚障害のある人は、どうやったらダンスが楽しめるのか。美術とか、ダンスとか、演劇っていうと、まだまだ当事者に聞いても分からない未知の領域で、見解もかなりバラバラなんですね。正解がない分野なんですが、だからこそわれわれはこういう考え方で、こういう経験を提供したいっていう表明というか、分からないことに対してわれわれはこう向き合ってますという態度の表明が必要なのかなと思います。それはきっとすぐに出る答えではないし、相当力のいるクリエイティブな作業だと思いますね。

杉山文野さん:
LGBTとは別ですが、フェンシング業界では今、もともとあまり馴染みのない人たちにも試合に足を運んでもらおうと、太田雄貴さんという方が頑張っています。フェンシングってもともと見ているだけではわかりづらいところがあって、その面白さを来た人に伝えるために、試合ではずっとラジオ解説を入れているんですよ。会場に来た人がラジオチャンネルにアクセスをすると、実況解説を通して、どうして今目の前でこれをやっているのかがわかる。そんな風に、イベント中ずっと楽しく解説してくれる人がいるっていうのも、一つアイデアかなって思います。

レインボーパレードでは今FM局さんとご一緒させていただいていて、パレード会場内にFM局が1日ブースを出していて、そこで朝から晩までずっとラジオをやっています。LGBTの話をしたり、パレードのゲストの方が代わる代わる来て話をしたり。7時間ぶっ通しでやりながら、実際にその場所で起こっていることとリンクしていることもあったり、本当にいわゆるラジオ番組として、合間合間にイベントのスポンサー企業さんがコメントしたり。ラジオ番組と連携して、そういうある種解説的な情報を流していくというのは一案としてあると思います。

廣川:
現場に行けない方も多いですしね。地方に住んでいて、東京までは遠いけど関心はある方って、地方に一定の割合でいて、「また東京か」なんて思っていらっしゃると思うんです。そういう方たちに向けてイベントをカメラ中継して、ネット配信して、無料で参加したような気持ちを味わえるっていう部分も、同時に用意できたらいいかもしれません。

ジュリア・オルソンさん:
どうやってその情報をみんなに知ってもらうかっていうところですよね。ラジオもそうなんだけど、他にも障害者やLGBTの人たちのコミュニティのインフルエンサー的な人たちを巻き込んで発信してもらいながら、イベントの一つの要素として彼らがトークをできるような場を設けるのも良いですよね。自分と同じような経験をしている人、身近な尊敬している人に会えるってなると、行きたいなって思うことも多いと思います。出演しているような方は遠い存在の人たちだけど、ちょっと憧れているような方が座っていていろいろ聞ける場があったりするとしインタラクティブでいいなと思います。

森:
ありがとうございました。本日いただいた貴重なご意見をもとに、今後のフェスティバル運営に生かしていきたいと思います。

  • True Colors DANCEにて、ゆずり合いエリアや手話通訳者の案内ボードを持つ事務局スタッフ

撮影:
冨田了平(True Colors DANCE)
佐竹邦彦(True Colors BEATS)

True Colors Festival 2020/2021

True Colors Festival(トゥルーカラーズ フェスティバル)は、パフォーミングアーツを通じて、障害・性・世代・言語・国籍など、個性豊かな人たちと一緒に楽しむ芸術祭です。誰もが居心地の良い社会の実現につなげる試みです。

世界的な危機により、私たちは身近な人たちと引き離される経験をしています。でも、だからこそ人とつながること、共に楽しむことの大切さを再認識しました。

新たな環境で、アーティストと観客が、どうやって体験を共有し、共に楽しむことができるのか。みなさんと一緒に考えながら、プロジェクトを展開していきます。

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